第3章 「南へ!」
8月5日 東北四大祭、その一
フェリーの二等船室で泥まみれのからだで泥のように寝たかと思うと甲板には青森の町が見えてきた。フェリー旅行初心者だった僕は、船内に浴室があることを知らずほぼ手ぶらで乗船。風呂に入るというチャンスを逃した、次からは気を付けよう。
一週間ぶりの本州、北海道は夏でも寒いくらいだったのがいきなり夏に戻ったように陽射しも強く気温も高い。道中体力の消費も激しくなることを頭に留めておこう。僕は船室から駐車場に降りて泥だらけの相棒にまたがった――。
目標とする沖縄まで、予定は10日。今日はこれから待っている厳しい暑さと行程に備えて準備に一日を充てることにした。というのも、せっかく東北に来たので「東北四大まつり」を順繰りに見て行こうと思っていたからだ。青森と言えば「ねぶた祭り」。ちょうど今日やっているとのことで、コレを見ずに青森を離れるのはもったいない――。
本州上陸してすぐ近くの公園でテントを張って、四大まつりの一つ「ねぶた」が始まる夕方まで単車の整備と身の回りの点検をする。午前中は泥まみれになった単車の清掃。長い距離を走るとなると汚れは少しずつ影響してくる。この時に確認したのがチェーンの弛み、微調整はしてきたがいよいよ補正が必要になってきた。盛岡で転送してもらったエアフィルターが明日には秋田に着いているだろうから、それまでは大丈夫だ。
僕は再び元気を取り戻した相棒に乗って、溜まった洗濯物と風呂セットを持ってテントを残して町の散策を決め込んだ。
朝から三内丸山遺跡を見学して、昼食を取って銭湯とコインランドリーを探す。地理が分からないので交番で聞いたら、とってもキレイな女子警察官が地図を書いて教えてくれた。とてもキレイだ、警察官にしとくのもったいない。でも……、説明がなまってて全然わからん。それも愛嬌ですな。
そしてゆっくりすること数時間、灼熱のテントの中で昼寝をしていると辺りはざわつき始めた。
この雰囲気。祭ですよ、祭。僕は騒ぎのする商店街の方へふらふらと歩いて向かった。
* * *
祭が始まると大きな大きなねぶたが通りを行脚する。陽は暮れてもねぶたの灯りがまぶしく光る。バスくらい大きな張り子が悠々と歩き、そして回り、暴れる。それを取り巻く跳人と呼ばれる人々。
ラッセラー、ラッセラー
といえばねぶたでの掛け声。勇猛なねぶたのパレードは夜遅くまで続いた。これが四日も続く(この日は二日目)のだからねぶたに賭ける人のバイタリティーとはこれいかに。見ることができてよかった。
明日もあるので僕はテントに戻ったのだが、興奮冷めやらぬ青森の街は夜通し大騒ぎだ、ったらしい。毎年荒れるみたいですね……。
* * *
本日到達した都道府県。
(青森) ( )付きは再上陸
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