王都での1日

王都ラピリア2日目、酒場で働くシンの前には赤い髪の少女ユナの姿がある。


「で、あんたはお金もないのに酒場に来てそれを返す為に働いてるんだ」


情けないものを見るような目でユナは問いかけてくる、笑いたくて仕方ないそんな感じだ


「そうだよ!何か文句あんのか!チクショー」


この件に関してはシンは何も言い返せない、でもちょっと悔しいので精一杯言い返してみる。だがそんな抵抗では、返ってユナには面白く見えてしまう。


「だって、だって、あははっあーもう無理っあんたバカすぎっあはははは」


指を差しながら思いっきり笑うユナ、お供に連れていた赤姫の団員は珍しいものを流ようユナはを見ている。戦場にいるユナを知っている彼女達からすると非常に珍しい光景なのだ。


「笑いすぎだ!それにここは酒場だ、お前みたいな子供が来る場所じゃありません!」


自分が悪いのはわかっているが本気で笑われやっぱり悔しいシンは言い返してしまう。

そんなシンの言葉を聞き団長が侮辱されたと思ったのか赤姫の団員が剣に手を掛けがユナがそれを手で制し言い返す。


「これでも成人してるのよ!お酒ぐらい飲めるわよ!」


本当はお酒は飲めるがまだ甘いカクテルぐらいしか飲めないのだが、子供と言われたのでムキになってしまう。

しかし、ここで別の物が会話に入ってくる。


「おや?あんた達赤姫の団員かい?こりゃすごい客が来たもんだ、今回あんた達のおかげで勝てたからね!奮発するよ!」


そう言うとレベッカはほぼ満席だった店内にスペースを無理矢理つくり赤姫を迎え入れる。

ユナ達はありがとうと言いつつ席に着く、周りの客達はあれが赤姫か、まだ子供じゃないかとか言っていたが、ユナにキッと睨まれ黙ってしまった。


「ほらシンぼーっとしてないで、今日はもう仕事はいいから赤姫の相手しな!知り合いなんだろう?」


レベッカがいらない事を言ってしまう、他の客からはあの坊主赤姫の知り合いなのか、何者なんだ?と話題になってしまう、中にはちょっと畏怖の目を向けられてしまっている、居心地悪い。

しかしレベッカさんにそう言われてしまっては席に行かなくてはならないので我慢する。

その間にユナが他の団員にシンの事を話していた、やはりセクハラしたのはマズかったらしく汚物を見るような視線を送ってくる。ホントにすみませんちょっとした出来心だったんです。


「それであんたいつまで働くの?ずっとじゃないよね?」


ユナが問いかけてくる。その時も団員達はいつでも剣を抜けるようにしている。やめてよ、敵じゃないから


「今日で最後だよ、明日からはまた旅の続きをするよ」


明日には王城に行くつもりだ、証が本物が確かめなくちゃならないからな、それに金も稼がなきゃいけない


「そう、お金がないなら一緒に討伐の依頼してあげてもいいわよ!次の戦までヒマだしね」


こいつといると面白い事がありそう、そう考えていたユナはこう言ってくる。


「いや、遠慮しとくよ、ユナが一緒なら心強いがちょっと気になる事もあるしなしばらくは1人で行動するよ」


レベッカに代行者である事は知られない方がいいと忠告されていたし、ユナは知っているがユナがいると目立ちそうなのでここは断っておく


「こ、心強い」


一緒にいると心強いと言われて小声で繰り返してしまうユナ、前にもシンに可愛いとも言われていたユナはそれを思い出し少し顔を赤くしてしまう。

彼女は序列5位で赤姫の団長という肩書きを持っていたため、畏怖や尊敬などはされていたがそう言われた事はなかったため慣れていないのだ。

だが断られてしまったため少し残念な気持ちもある。


「でもユナが必要になる事もあると思うからその時は手伝ってくれたら嬉しい」


「ホント⁉︎ならその時は必ず言いなさいよ!」


こうシンに言われ機嫌が良くなるユナ、その様子を団員はまたも珍しいものを見るような目で見ていた。



*******


夜になり部屋に戻ったシンは周りに誰もいない事を確認し呼びかける。


「ノア、聞きたい事がある、出てこれるか」


すると頭の中に直接語りかけてくる、無邪気そうな、しかしどこか大人のような落ち着きのある声がする。


(ああ、ボクに分かることなら教えよう、なんだい?)


「砂の証の事だ、レベッカさんに聞いた話じゃ王城で売ってるらしい、本物なのか?」


(ふむ、そうだね、確かに証は1つしかない訳じゃない、世界により、と言うより神の性格かな?たくさんある証もあるし、1つしかない可能性もある)


「やはり直接見て確認するしかないな、ノアが見れば本物か確認出来るか?」


(そうだね、ボクなら判別は出来るよ、その場合君の目を通して確認する事になる、王城に着いたら呼んでくれればいいよ)


「わかった、無理をさせてしまうが頼む」


(心配してくれるのかい?君の為さ少し力を使ってしまうが喜んでやらせてもらうよ)


「ありがとう、それと1つ気になったんだがやはり代行者の事はあまり言わない方がいいのか?」


(確かにその通りだろう、中には街を滅ぼしてでも手に入れようとする奴もいるからね、特に序列2位には気をつけるんだ、奴は容赦しないからねしかもボクを特に敵視している)


「序列2位か、しかしなぜ敵視するんだ?」


(それはボクにもわからない、奴は空の神の代行者だ、空の神と坊主はあまり仲が良くなかったしね、その影響で何か吹き込まれてる可能性がある)


「そうか、代行者である事は出来るだけ隠しておこう」


(ああ、その方がいい)


「それにしても、証が普通に販売されてるとはな、無の証はどうなんだ?俺は普通にもらえたが」


(ふふ、秘密さ、ミステリアスな女性は魅力的だろう?)


「関係ないと思うんだけどな、まあいい明日は王城だ、よろしく頼むよ」


(ああ、任せてくれよ、さあ2つ目の証を手に入れようじゃないか、行くぞ、エイ、エイ、オー!)

(ちょっと一緒にやってくれないのかい?ボク1人だけでは恥ずかしいじゃないか!)


「いきなりやられても困るだろ!それにしても楽しそうだな」


(ノリが悪いなぁ、まあいいか、そう楽しいんだ、やっと他の世界を見たりする事が出来るからね、それにシンが一緒だからね、好きな人と一緒なら何をしてても楽しいものさ!)


「神様に好きも嫌いもないんじゃないのか?」


(そんな事はないさ、さてそろそろ限界だこれでお休みにするよ)

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