第2話 九条、クローゼットの奥を探索する

クローゼットに開いた入口はそれなりに大きくかがまなくても問題がなく歩くことができた。

光源のスマホでは若干頼りないがほのかな明かりを目印に地下へ続く階段を降りていくと段々と光が強くなってきた。奥はそれなりに明るいようでどうやら明かりは必要とせずに済みそうだった。


「やっぱりどこかの施設とかと繋がったのか?」


近くまで来ると光源の明かりは太陽光ではないことが良く分かる。

薄っすらとした碧色の光で非常口の明かりのような印象を受けるがそれよりかは優しい光のように感じる。


「…おお。こいつはすごいな。」


更に降りること暫く。階段を降りるとそこは洞窟のような場所だった。

石造りなのは階段まででその先の洞窟はむき出しの土が削られ空間を作っている。

だが、ただの洞窟ではないと訴えており、その土の表面に緑色に発行している苔のようなものがビッシリとついていてそれがこの洞窟の光の元になっているようだった。


「これならスマホのランプは要らないな。」


スマホをしまいながらこれからどうするか考えてみたが

この洞窟は階段こそ石造りだが降りた先は自然洞窟のようで先は1本道だが碧色の通路の奥を照らしておりここからでは終わりは見えない。ここで引き返して大家の婆さんに報告しておくのもいいかもしれないけどもう少しだけ先を進んでみることにした。自然洞窟でもこうやってあからさまに隠されているような場所なら何かありそうだしな。


碧色の光が照らす通路を進んでいくと奥に開けた空間が見えてきた。

どうやら広間があるみたいだな。

広間は俺の部屋である6畳1間よりはるかに大きく3倍は広いだろうな。

その真ん中にポツリと石造りの台座が置かれている。


「なんだ?これ?水晶玉?」


そう水晶玉だ。石造りの台座の上に鎮座しているのはよく占いとかで使うようなイメージの水晶玉が置かれていた。なんでこんなところにあるんだ?もしかしてこの洞窟って昔の遺跡だったりするんだろうか。

それよりもこの水晶玉は腕に抱える程大きく値打ち物だと言うのが良く分かる。

も、もしかして骨董品屋に持っていったら高値で売ってくれるんだろうか?

これだけのものだから5万?10万?いや、歴史的な価値があればもっといくか………

大台の100万も夢じゃないな……!

思い立った吉日。確か近くの商店街に骨董品屋があったよな。

あそこなら高く買ってもらうことも可能だろう。


「よし、じゃあ有り難く頂いて俺の食費になってもらおう。いやぁ、感謝、感謝。」


今月厳しかったんだよ。


『よし、じゃあないです!サラッと売り飛ばそうとしないでくださいよ!』


ん?俺が水晶玉に手をかけたところで声がかかった。

もしかして持ち主がいたんだろうか?元々謎の洞窟だがこれは明らかに人工物なので誰か持ち主がいても仕方ないんだが…少しガッカリしながら声の主を探すも見当たらない。

声は前から聞こえてきたが前方はだだっ広い空間が広がっているだけだけで声の主は見つからない。なら左右後ろにいるのか?と考え辺りを探すも見当たらない。

ふむ。


「空耳か。こんな洞窟に人がいるわけないもんな。じゃあ改めて頂くとするか。」


『空耳じゃないです!ここです!私です!この水晶玉です!』


「いやいや、水晶玉が話すわけないじゃないか。もしかして疲れてるんかな?うんサッサと売りに行って美味い物でも食いにいくべきだな。」


どうやら幻聴が聞こえているみたいだ。

最近働き過ぎだったからな。きっと疲れてるんだろう。

臨時収入が入ったら後で焼肉でも食いに行こう。

こういう時は美味い物を食うに限るもんだ。


『いやぁぁぁ!なんなのこの人!目の前にいるって言ってるじゃないですか!ええい、こうなったら!』


幻聴に合わせて水晶玉が浮かび上がりピカピカ光だした。

って眩しいなおい。


『どうです!ただの水晶玉浮かんだり飛んだりしないですよね!私の話を聞いてください!』


「おお、これはすごいな。」


『そうです。私はスゴイのです!だから話を聞いて……』


「光って浮いて喋る水晶玉か。一体いくらで売れるんだ?いや、TVに出して出演契約を取るのもあり、か。どちらにしても高値なのは間違いない。たまらんな。」


『いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!だから売らないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!』



俺のテンションは上がりまくり水晶玉からは悲痛な叫び声が聞こえたが必要な犠牲なんだ。

俺はお前のことは忘れないから俺の臨時収入として立派に活躍してくれ。











「さっきは悪かった。……んで?お前は一体なんなんだ?」


『ウッ…グス……グス…お願い…売らないで……』


あれから俺も水晶玉が意思疎通が完全にできるのを認め、話を聞いてやろうというのにこの水晶玉はプルプル震えながら泣いているばかりだった。

いや、泣いているっていっても水晶玉だから本当に泣いてるかどうかは分からないんだけどね。

一応俺が悪いみたいだしさっきから謝っているんだがこうやって震えて泣いてばかりで一向に話が進まない。


「いや、悪かったよ。」


『グスッ……。わ、私のこと売りませんか?』


「ああ、多分な……。」


これだけ話せるならもっとこう研究機関とかで研究対象とかで引き取ってもらえたりしそうだよな。なんてことを考えていたのがバレたのか水晶玉がまた泣き出した。

段々面倒になってきたな。


『ああ……やっぱり私は売られて解剖されてしまうんだわ………っ。こんな世界になんて来たくなかったのに………神様恨みますよぉ~!』


「悪かった悪かった。もう売ったりなんて考えないさ。で、そんなことより」


『…………私のことなんてそんなことなんですね……。』


「お前ってなんなの?さっきこの世界とか言ってたけど、もしかして異世界から来たとか?」


『えっ?なんで分かったんですか?』


いや、まあよくある話だし。ラノベでは、だけどな。


『確かに私はこことは違う世界からやってきました。このダンジョンを消滅させる為に』


と、この水晶玉は宣った。



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