第23話 僕は本物の女神に出会う
魔女っ娘女神様の妹分? 2号として、誕生したアデライドちゃんはそれはもう小さな村の中を駆け巡った。
外見は非常に可愛い。フリフリとした衣装は漫画にいれば漫画家泣かせの衣装の痛々しい恰好。そして、どこかブリっこじみた仕草は僕の頭痛を増やすものの、非常に似合っていて複雑な気分にさせられる。
「アデライドちゃん登場よ!」
と魔女っ娘女神様の石像の前できゃるるるんとしたポーズをとる幼女がいた。
正直正体を知っているので僕はめまいがしそうではあるんだが。
しかも、その横にはガザックが不気味な女装をしながら、花吹雪を巻いていて、非常にビジュアル的に気持ち悪い。
ただ、アデライドの男というのを知ったその姿は何か保護欲を誘うようで、ガザックの存在を視界から外してしまう。
女性からは苦笑いを浮かべられているが、もう日常の光景だから遠巻きに見ているだけだ。
そんな女性の中に僕は眉をひそめながら、彼女(?)の様子を見ていた。
「ほらほら、可愛いでしょ」
と芽衣子が僕の肩を叩きながらそんなことを言う。顔をにんまりさせて、もう僕の心をいじめているとしか思えないわけで。
とは言っても僕は騙されない。
「で、これから何を僕にさせようと思っているんだ」
「何も無いよ。そんなのどこにもこれっぽっちも。ただ、面白そうだから貸してあげただけ。大体あの人、力だけはあるんだけど、魔力がからっきしで魔術は使えないんだって。だから、杖を振り回してもあんまり害はない。時々、家の柱を折ったりするけど、慣れているみたいですぐに直しちゃうというか、新品みたいに修繕しちゃうからありがたられている」
にやにやとする顔はどうも何かを僕にやらせたいという顔だ。何を企んでいる。
「別にお兄ちゃんには何の害もないじゃない。どちらかというと魔女っ娘女神様がありがたみが減っちゃって困るくらい。それは困るんじゃない? 元祖魔女っ娘女神様として」
いや、僕としてはそれは大歓迎だ。魔女っ娘女神様なんて返上したいくらいだ。うれしい、うれしいはずなのだが、何かがおかしい。
「僕とあの筋肉魔女っ娘をぶつからせようとしているのか」
「ぶえっつにぃ~。私は何にもしない。でも、お土産企画とか、ルディアさんが考えていてね。そのためにはもう少し何か発奮剤が必要だと稼働だとか言っていたのは覚えているよ」
ルディア、何をする気だ。
あの酔っ払いエルフのロクでもない企画。
これは止めなくては。
「あ、ちょっと待ってね。時間もあるし、あの光景見ていようよ」
がっしりとホールドされる僕の右腕。
華奢でちっちゃい幼児体形のくせして、何でこんな時だけ力が強いんだ。
しかも、体全体で包み込んでいるのに平たい感触しかしない。
「あとで覚えていろよ。確実に魔女っ娘女神様、写真集を作ってやるから」
背筋をぞっとさせる般若のような顔を芽衣子はしていた。これは確実にコイツはやる。逃げる。僕は逃げないと一生の恥をかかされる。
「僕何も言ってないぞ」
「顔に出ているよ。この貧乳。平たい族、幼児体形って」
「色々とマシマシになっていないか」
「やっぱり、考えていたか。この女装野郎!」
墓穴を掘った。何てことだ。これでは芽衣子になにをされるかわからない。こりゃまずい。誤魔化せ。
「僕は男だ! ということであとはあの酔っ払いの元へ」
「いーやーだー。しゃーしーんとあとは村おーこーしのお手伝いをしちゃうーんだ」
駄目だコイツ。全部覚えて、全部実行しようとしていやがる。
「たーのーもーう! 魔女っ娘女神様はここにいるかー!」
そこに女性の声が聞こえた。
凛とした声は武士を思わせるような大きいが、凛とした声は高く綺麗な通る声。
聞こえたのは村の入り口から。
これは一体なんだ。
「これは私が行かなければいけないわ」
アデライドが走り始める。しかし、それは余計な厄介ごとにしかならない。
あれは止めるしかない。
「始まった。うふふふふ」
僕の右腕を体で握りしめながら、微笑む芽衣子の企みが完遂されようとしている。
それだけが分かるような悪役感(小悪魔感)あふれる声。
ぶわっと僕の体という体の毛穴が開くような感覚がして、汗が流れる。
冷や汗。
ロクなことにならない予感しかしないのだ。
「さーて。魔女っ娘女神様。変身していくのよ」
「いーやーだー」
「へーんしーん」
「ぎゃー。僕はもう酷い目にあいたくないんだ。勘弁してくれ。酷い目に合わされるのはこりごりだ。だから、本当に嫌なんだ。マジで、本当に嫌だ。こんなのって、ないよ!」
芽衣子から渡されたステッキが僕の体を強制的に魔女っ娘へと変身させる。
これはもう、罠。
ああ、何が起こるんだっ。
わけがわからない。
誰か助けてくれっ!
「うむ。まずは私を倒してからにしてくれ」
アデライドの前に現れたのは最後の常識人。
「何このデカ女。邪魔しないで」
それは最後の希望。
「アンリさん」
「うむ。流石にこれはいけないと思ってな。魔女っ娘女神の助けになってやろうと思ってやってきたのだ」
彼女が最後の常識の壁の女神だ。
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