我が村の魔女っ娘女神様(男の子)
阿房饅頭
魔女っ娘女神様爆誕
プロローグ 僕は男だーっ!
「何てこと。失敗だわ」
僕が目が覚めた途端、僕が聞いたのは頭を抱えた緑がかった金髪の髪をかきむしる女性の姿だった。
そこまでであれば外国人ということでまとめることができるが、その姿は現代日本ではコスプレとも言える姿で、茶色いゆったりとしたローブのようなものに三角帽子を被った、まるで魔法使いにしか見えない姿。
その姿はとても非現実的すぎて違和感しかなかった。
さらにいうと、彼女の細く耳は尖っていて、よく漫画とかラノベとかに出てくるエルフを思い出させる姿だった。
「異世界か?」
僕は一人呟いて、頭を振る。
確かにここは自分には読めない文字が刻まれた魔法陣と石造りの頑丈そうな壁のある日本にはあまりなさそうな部屋の中。
とはいえ、どこかのアトラクションと思えば理解できるのかもしれない。
だから異世界にきたと飛躍するのはちょっと間違っているのではなかろうか。
言葉は日本語として入ってきているし――ちょっと待て日本語を話す耳の尖った人というのはありえるだろうか。
翻訳魔術なんて便利なものは僕は聞いたことがない。
――やっぱり自分は自分の知らない異世界に入り込んでしまったのだ。
「うー何独り言ってんの? そこの冴えない顔した男子ぃ、あ、でも顔は可愛い系? 女の子かな?」
「違う! 僕は女の子じゃなくて、れっきとした男の子だ」
「メンド臭い子だなあ。というか、チェンジよチェンジ。私が呼びたかったのは女神様になれそうな可愛い女の子よ。君みたいな女顔の男の子はお呼びじゃないのよ」
と言われましても召喚したのはあなたのようですが。
などと反論はしたくなるが、正直僕にはどうでも良かった。
ここが異世界であるという事がわかればいい。
「よっしゃああああああああああああああ」
「びっくりした。何よ、あんた。いきなり、そんなに叫んで。うー酒を飲んで二日酔いには響くのよ」
「というか、二日酔いなのに異世界召喚したの」
「まあ、もう少しキリッとした顔であったほうがよかったかな」
「そうじゃなくて、結構重要そうな魔法を適当な感じで使うとかありえないんだけど」
「あーもー! うるさいわね。そんなに硬いことを言わない! えーと、なんだっけ?」
「
「じゃあ、ミズキでいいかな」
「親しきものにも礼儀と言うのがあると思うのですが」
「いちいち細かいなーメンドイメンドイ」
エルフはひらひらと右手をさせて、物凄くテキトーなことを言い始めている。
僕は思わずため息をついて、エルフの態度に説教をしようとしたが、そんなことはどうでもいい。
今はここが新天地であり、自分がある現実から逃げることが出来たことについて喜びを感じよう。
そして、まずはこのエルフさん――
「私様の名前でしょ。ルディアさんと呼びなさい。まあ、チェンジする予定だから、短い付き合いよね。うん、どうでもいいよね。さあ、そこの陣に」
「ちょちょまって、僕は
「ルディア! 私も成功したぞ!」
バンと頑丈そうな扉を上げて、白を基調とした和服めいた服を着崩した背の高い美人が入ってきた。
というか、その格好で大きな丸いおっぱいが見えかけてて、慎みがない。どうして、この世界の人はそんなに適当なのか。
艶やかな腰まである黒髪はポニーテールのように結ってあるけど、何だか無造作だ。
「アンリ、ちょっとぉ、二日酔いだからもう少し丁寧にあけてよ。頭に響いちゃうじゃない」
「それはキミの自業自得だから知ったことじゃない。私にはどうでもいい話で瑣末な話だ。本題に移ろう」
「そっちも成功したの? 生意気ねえ。召喚士としては私よりもかなり下なのに」
「ふふん♪ 私は天才だ。すぐにエルフのキミに追いつくことが出来るのだ。ほら、来なさい」
ご機嫌そうにアンリと呼ばれた美人さんはそういうと、誰かを呼んだ。
彼女の後ろからその誰かがやってくる。
「はい。お姉さま」
ん? この声、どこかで聞いたことがある。
生意気そうな感じで小悪魔めいた感じのする声。多分中学生っぽい感じのする女の子。
声そのままのいたずらが大好きで、僕をいじめるのが大好きな女の子。
しかし、ここは自分の知らない異世界であり、彼女がいるはずがない。
というか、彼女がいたり、自分の母がいればそこは地獄であり、お先真っ暗な悪夢となってしまう。
「うん、自称魔王とかいう面白い肩書きの子を呼ぶことが出来て私は満足だよ」
アンリの言葉は何かがおかしい。
酷く痛い言葉なのだが、僕にとっては違う意味をなす。
頭が痛い。鈍痛のような感覚。背筋を這うような悪寒がして、風邪のようにも思える。喉が酷く渇いたような感覚。
そう、プレッシャーだ。
自称だが、魔王の知り合いにあったときにいつもの感覚。
「お兄ちゃん、おはよう♪ そして、さようなら。お姉ちゃん、おはよう」
赤みがかった髪の少女はいつものように子悪魔めいた笑顔。
柊芽衣子。
彼女の名前を僕は覚えている。
人生をエンジョイしている感じのリア充少女。中2。
自称、僕の魔王だ。
彼女は手に持っていた白い杖を振るった。
きらきらと杖と同じ白い光が僕を包み込む。
「やめろ。うあっ」
僕は光に包まれ、服が強制的されて、体が浮遊する。
リボンのようなものが巻きついて、体の大切な部分を隠す。
そして、体が何かに引っ張られるような感覚がして、自分の体が変わるのがよくわかった。
変身している。
僕が味わう最悪の感覚。
「うあああああなりたくないい。僕は!」
悲鳴を上げる僕。
しかし、芽衣子は持っていた杖を投げ入れる。
それを体が勝手に受け取り、杖自体もリボンに包まれてその形は女児向けのハート型のステッキのような姿に変わる。
そして、ステッキを掲げた僕は自分の体を見回す。
ツインテールに結った蜂蜜色の長い髪。肌理細やかな人形を思わせる白い肌はプリプリとしている。
ところどころにフリルの入った白いフレアスカートのワンピース。
そして、違和感まみれの服を押し上げる胸に相棒のいない下半身。
「ああ・・・・・・」
小さく漏れた声も高くなり、のど仏がなくなっていることを確認してしまった。
僕は絶望して、肩を落とす。
「おほーっ、女神様ッ!」
先ほどまで腐っていたエルフが水を得た魚のように叫び声をあげる。その姿はさながらアイドルを見たオタクのようで少し気持ち悪い。
そして、この状況を作った元凶むふーと鼻を膨らませ、喜んでいた。
「いつも通りだね。お姉ちゃん!」
いやいやいや、これはいつも通りではない。
うん、そう思いたい。
僕の脳裏に走るのはこの格好で色々と恥ずかしい思いをした現実。
というか、僕は、だ。
「僕は男だーッ!」
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