7話 力
「っ!!」
その場にいる誰もがこの光景に自分の目を疑っていることだろう。正直なところ俺だってまだ信じることができない。
魔女は化物を見るような目つきでこちらを睨んでいる。
「あなた……どうなっているの?」
俺に与えられた力。ボイドは肉体の回復だ。と言っていたが、この力はそんなに生易しいものではない気がした。
バラバラにされた体が一呼吸おけば何事もなかったように元通り。しかも、おそらく俺が考えるタイミングで。
「ま、まあいいわ。今度は跡形も残らないくらいに――」
「気づいていないのか」
魔女が言い終わらないうちにレナが俺と魔女の間に立ちふさがる。
「お前の負けだ」
「ふ、ふざけないで!貴様ごと貫いてやる!」
威勢よく手を振りかざす魔女。だが、何も出てこない。
何度も手をブンブン振って魔法をひねり出そうとしているが、無情にも指輪からは先刻のような神々しい輝きは失われている。やめとけ、脱臼するぞ。
「な、なんでどうして!」
「パキラの種って知ってるか?」
俺は魔女の足元に落ちている巾着袋を指さした。先ほどの攻撃で破れて中身が転がっている。
そこには少し大きめのくるみのようなものがあった。
「パキラの木ってのは魔法使いの杖の原料なんかによく使われる木材らしい。なんでも、魔力をほとんどそのまま通すいい触媒になるんだとか」
魔女はだからなに? とでも言いたげにぽかんと俺の話を聞いている。いや、本当に聞いているのだろうか?
「この植物の種は季節関係なく、ある条件で芽吹くそうだ」
「ある条件?」
「ああ、その条件ってのは……自分の周囲で強力な魔法が発生したとき、その魔力を限界まで吸い上げ、それを養分とすること、だ」
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