パソコン界の困ったちゃん

エール

第1話 ニセ達人

パソコンショップでは、必ずと言っていいほどこのニセ達人が来る。

彼等は、一見すると普通の人と変わらない。


しかし、ショップの店員からは、非常に嫌われている。

彼等は、どういう行動をとるのだろうか。


まず、一人で店に入ってきた場合。

何を目当てに来たでもなく、商品を見て回る。そして目新しいものがあると、嬉しそうに店員に話しかけて来る。


客:「これって、この間出たばっかりの、新方式のSSDですよね」

店員:「はい、そうです」


ここまではいい。


客:「あー、やっぱ、出たばっかりだからちょっと高いんですね。でも、これからは、この方式が主流になっていくんでしょうね」


店員:「ええ、そうでしょうね」


ここまでも普通の会話だ。


客:「あれ……でもまだ、こっちに前の方式の奴もあるんですね? もうこっちは、誰も買わないでしょ?」


(ニセ達人だ!)


と、このとき店員は直感するのだ。


ニセ達人の特長1:展示してある商品をけなす。もちろん、雑誌で得た知識をもとに。


客:「まあ、こっちの新しいのは、もうちょっと安くなるまで待とうかな……」


そう言って、また歩き出す。


ニセ達人の特長2:ほめた商品でも、買わない。


そしてしばらく歩いて、また別の商品を見つける。


客:「あれ……この外付けの商品、OOO店では、28,800円で売っていたよ」

店員:「ああ、そうですか。この店では、その金額になってしまうんです。そのかわり、ウチでは本体が安いですよ」


客:「ああ、なるほど……」


ニセ達人の特長3:買う気も無いのに、他の店と値段を比べる。


その後、またまた別の商品に目を付ける。


客:「あれ?……このプリンタ、品不足って聞いてたけど、入ってきたんですね。これの8色インクタイプの物はまだ置いてないんですか?」


店員:「え、8色インクタイプの物は出ていないはずですけど」


客:「そんなことないですよ、確かに出てますよ。あなたが知らないだけでしょう?」


店員:「はあ……」


ニセ達人の特長4:店員の知らない情報があると、鬼の首を取ったかのように攻めてくる。


客:「ま、いいや……じゃあ、このラベルください」


ニセ達人の特長5:いろんな事をしゃべっていった割には、百円ぐらいの安い商品しか買わない。


そして悠々と帰っていく。


あとで店員が8色インクタイプのプリンタのことをメーカーに聞くと、

「そんなの、出してませんよ」

と言われる。


ニセ達人の特長6:情報が間違っている。


腹をたてた店員が、先輩にそのことを言うと、


「ひょっとして、眼鏡をかけた、やせ形の、三十歳ぐらいの奴か?」


「そうです、そうです」


「ああ、あいつは知ったかぶりばっかりしていくから、まともに相手しなくていよ」


とアドバイスされる。


ニセ達人の特長7:ニセ達人はブラックリストに載っている。


さらに友達を連れて来たときは最悪だ。もう面倒なので特徴だけまとめると……。


ニセ達人の特長8:二人で来ると、30分~1時間は平気でいる。

ニセ達人の特長9:二人で来ると、ニセ評論家同士の対談となる。

ニセ達人の特長10:二人で来ると、ソフトのコピーの話など平気でする。


そしてもっとやっかいなのが、


ニセ達人の特長11:一度来て店員とちょっとしゃべって帰っただけで、もう常連になったつもりでいる。


さらに、

ニセ達人の特長12:ニセ達人は、ニセ達人の自覚がない。


ニセ達人と友達にならないよう、自分がニセ達人にならぬよう、気をつけましょう。


(ちなみに、本当の常連さんは、店に行っただけで、店員の方から笑顔で話しかけてきてくれますよ)


*なお、「ニセ達人」に関する記事は、とあるパソコン雑誌にも載っており、被害は全国に及んでいるものと推察されます(^^;。

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