第20話笑わない少女と血盟戦決着
この世界にはレベルと呼ばれるその個人の力を示す基準がある。
一般的には
その恩恵は、各能力値の上昇による強化。習得スキル数の増加などがある。
人間種のレベルの限界は300、そして能力値にも数値の限界がある。
その数値は255。
とはいえ能力値の上昇には個人差があり、たとえレベルの限界に達しようとすべての能力値が限界の255になることはまれである。
個人差、もしくは職業によるものか。
例えば
逆をいえば、レベル限界に達してなくても能力値の限界の255に達する者がいるということだ。
そのような者を
そう今、私の目の前にいるダイスもその
さて、ダイスの筋力値は255.敏捷値もそれに次いで高い。
逆に私の能力値は限界に達しているのは敏捷値と魔力値のみ。
筋力値に至っては100あたりで早々と上昇が止まった。
レベル差は絶対。でもそれを覆せる可能性があるのが
力で攻めるのは愚策、ならダイスより
「先手もらうわ『
移動系最上位のスキルでダイスとの間合いを一瞬で詰めながら槍を突き出す。
しかし穂先が胸元に触れる瞬間、ダイスのスキルが発動する。
「『
弾いた衝撃で上方へ流れた勢いをさらに利用する。
「おらっ! 『
ちいっ! 「『
連続の瞬動で足が軋みをあげながらも、後ろに移動しその攻撃を躱す。
だがダイスの攻撃は続く。 私を追いかけて深く踏み込んだダイスは、何時の間に手にした左手の
その攻撃は槍を盾に、そして地面に突き刺すことでその攻撃を防ぐことに成功した。
私は
やはり対人戦なれしているわね。
時にスキルの繋ぎが上手い。
私に足りない物それは対人戦の経験だろう。
あの
それはそうだろう。あの
勇者の敵は人間ではないのだから必然的にその敵も当時の主な
その殆どが人型をしていなかった。
「
へえ? つまりダイスは……
「
と言い捨て様切り込んできた。
上から下、そこから跳ね上げる様に再び切り上げる。
まるで嵐のような猛攻に反撃の隙がない。
「どうした? 防戦一方かっ!」
攻撃の隙は、スキルで補うその闘い方は私の経験の無いもので内心舌を巻いていた。
私はチラリとカリヴァーンの刺さっている方に目を向ける。
するとその視線を塞ぐように位置を変えるダイス。
警戒しているわね。
たしかにカリヴァーンがあれば、
だけど、それでは意味がない。
この戦いは、コンティナ家の戦力を削ぐという目的の他に私の対人戦の経験を積む目的もあるのだ。
でも……
「あんたはこっちの鑑定スキルが効かなかったことから俺よりレベルが上なんだろう。信じられんがな。だが俺ならそれを覆せる」
だけど……
「だんまりか? まあいい。仲間の敵、取らせてもらうぞ!」
最終的な強さは、能力値にレベルが加算される。多少のレベル差ならそれはたいした差にはならない。
ダイスのような
「私のレベルを教えてあげるわ」
「なに? なんのつもりだ?」
ダイスは警戒を強めた。ハッタリかなにかの策か?
「私のレベルは……999よ」
そしてステータスを表示してダイスに見せてやる。
ステータスを他人に視認出来るようにすれば、レベル差による鑑定妨害は意味をなさなくなる。
本来はパーティー内や信頼を得るために行う行為であるが。
「バカな!? 人間の
ダイスの眼に魔力が込められていることから鑑定を発動させたのだろう。
その顔がみるみる青ざめる。
「偽造スキル? いやそれこそ空想の中のスキルだ。なら本当に?
対人戦の練習とはいえあまり長くやるのも意味はない。
大体のコツは掴んだと思うしね。
「『
「またバカの一つ覚えの……なに!?」
私は
「『
私の背中への一撃をそれでも脅威の反射神経か経験によるものか、身体を捻って直撃を避けたがその脇腹を大きく削った。
しかし。
「ぐっ!? 捕らえたぞ!!」
ダイスはその高い筋力値で脇腹にめり込んだ槍を抱えるとニヤリと笑う。
でも残念。
「貪り喰らいなさいガルム」
私の槍はただの武器ではない。
私の
「ぎゃああああああああぁぁぁ……」
断末魔は次第に小さくなりそして。
ゲェップ
下品なゲップとともに元の槍の形状に戻る。
もう少し苦戦すると思ったのだけれど。
こんな物なのだろうか?
圧倒的な力だがそれは奢りと油断を生む。
それを学べただけでもこの戦いは価値があった。
『乙ー、嬢ちゃん! だが結局力押しか』
レベル差による力押しが結局一番いいのかもね。
私はカリヴァーンをストレージに仕舞い、仕掛けの最終確認のために王都へ帰ることにした。
さあ仕上げに入りましょうか……
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