第9話笑わない少女と冒険者ギルド
アル=レギルス文明以前、魔法とは神、それに匹敵する存在へ呼びかけ、その力を借りるといった技であったという。
しかし、女神ル・シャラがこのイスハーン大陸を他の大陸、イスカトリア大陸、イカルガ大陸から呪的に隔離したことにより、高位の存在の介入が出来なくなった。
そこで、アル=レギルス文明時代に大気中に漂う
かつての魔法と違い、個人の才能によって威力や効果が左右されるものとなった魔法は、習得する為に才能を審査され選別される。
それにより選ばれた一部の人間が通う学園。それがストレイナ王立魔法学園だ。
当然他の国にも魔法を教える場はあるが大体は学ぶには莫大なお金が掛かる。
話を戻す。 魔法の才能は遺伝すると言われる。
故に古来よりその地位を不動の物とするため、貴族は魔法の力持つ者を集め一族として迎えた。
今では魔法を使える者=貴族との認識がまかり通っている。
しかし市井の者にももちろん才能が開花する者もいる。
高い才能を持つ者は貴族に取り込まれ、大した力でなければ押しつぶされる。
ここは、魔法の才能持つ者の為にその門戸を開くと言っておきながら、実の所は貴族の為にその選別をする所なのだ。
教室に入るとけたたましい音を立ててジョリーナが椅子を巻き込みながら倒れる。
その顔はまるで死人を見たかの様。
取り巻きが慌ててジョリーナを助け起こそうとするが、彼女達も震えている。
ミダイが失敗するとは考えなかったんでしょうね。
気にせず自分の席に着き机に頬をついて外を見やる。
どうするか……
ジョリーナの始末をどうしようかと頭の隅で考えながら授業の開始を待つ。
それにしても……リティシャの持つ称号、
あれがあるということは、少なくてもその復讐を少しは実行しているという事だ。
私がジョリーナを殺せば私にも
そんなことを考えながら時間は過ぎていくのだった。
この大陸にはギルドという物がある。
これは、同業者達による、相互補助を目的とした組織の事である。
元々は、都市の運営を大きく発展し寄与した大商人が組織した商人ギルドが初めてであった。
その内、商人ギルドが市場を独占する事に危機感を覚えた生産者達により、生産ギルド(鍛冶ギルド、織物ギルドなどあったが資産力の問題から商人ギルドに対抗出来ないため一つに纏まった)を結成し対抗した。
また、徒弟制度という厳格な身分制度が存在し、その頂点に立つ親方は、職人、徒弟を指導して労働に従事させている。
親方を名乗るにはギルドに入っていることが条件となっている。
現在ギルドは多岐に渡って存在する。
冒険者ギルドもその一つである。
冒険者ギルドも、冒険者と探索者とに別れていたが、時代と共に一つに纏まったという経緯がある。
探索者とは、イスハーン大陸が女神ル・シャラによって呪的に封鎖され他の大陸と隔絶された今の状況を打破するために、ル・シャラが眠っている場所を探す者達の総称であった。
しかし時代が流れ、いつしか盗掘者と成り下がった探索者達を危惧した冒険者ギルドにより合併吸収して現在に至る。
今日は学園が休講日のために、かねてから考えていた冒険者ギルドに登録しようと王都にある冒険者ギルド本部にやってきた。
ギルド本部は王都の中輪部、ここ王都は三重の城壁によって守られている、にあり商業区側もその近くにある。
他の建物と比べても大きな建物で、石造りの三階建ては周りより頭一つ飛び出ている。
朝食後に来たため、まだ店も殆ど開いていないが冒険者ギルドはもう開いている。
一応24時間対応だったかしら?
私は、その建物に相応しい大きな木製の扉に手を掛け中に押し開く。
中に入っていくと、まだ朝早いにもかかわらず冒険者らしき人々がたむろしていた。
受付で何か手続きをしている者、壁際にある、あれは掲示板だろうか? に集まり相談している者、一階は広く、受付と飲食スペースが一体となっている様で、仕事帰りだろうか? 祝杯を上げている者もいる。
その冒険者達の間をぬって受付に近づく。
受付にはまだ若い受付嬢が下を向いて書類を整理しているようで私に気付いた様子がない。
しかたないので、カウンターを軽くノックして注意を呼びかける。
「あっ! 申し訳ありません」
受付嬢は謝りながら書類を置いてから向き直ると笑顔で対応した。
「冒険者ギルドようこそ! 仕事のご依頼でしょうか?」
「いいえ、ギルド登録をしたいのだけれど」
私がそう言うと彼女は、引き出しから書類を取り出しカウンターに置いた。
「新規のご登録ですね? では、こちらに名前、職業、得意とする武器または魔法を一種類以上のご記入をお願いします。代筆が必要でしたら無料で承っておりますが必要でしょうか?」
「結構よ」
代筆を断り、私は、書類な必要事項を書き出す。
名前は本名でいいわね。 職業……まさか
武器は槍と元素魔法でいいわね。
「これでいいかしら?」
受付嬢は素早く書類を確認し頷くと書類を仕舞う。
「はい、結構です。それではギルドカードが出来るまでの間、ギルド規約の説明も出来ますが?」
「いいわ、それより規約が書かれた本等をもらえるかしら?」
「かしこまりました」
そう言うと一冊の小冊子を取り出しこちらに渡してくる。
「こちらにギルド規約が書かれております」
後で読もうとその小冊子を懐に仕舞う。
もちろん見えないようにストレージに仕舞ったが。
やがてカードが出来たので、受け取る。
「これでギルド登録は終了となります。ようこそ! 冒険者ギルドへ! 私の名前はセナと言います」
そう言って受付嬢は軽く頭を下げる。
私も頭を下げ挨拶し移動する。
私は、依頼が張ってある掲示板に足を向けた。
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