ギルディニア英雄伝記

HIDE

序詩

──〈英雄〉。


捕らわれの姫を、悪の手から救い出した孤高の勇者。

負け知らずのまま、幾百もの死線を潜り抜けた歴戦の強者。

比類なき常勝の軍を率い、戦乱の世を平定に導いた傑出の覇者。

それは偉業を成し遂げた者にのみ贈られる、最高の栄誉と惜しみない称賛の名だ。


その功績を王に認められ、次期王位継承権を賜った者。

戦場の鬼と畏れられ、軍神として後世にその名を遺した者。

太平の礎を築き、善王の名の元に自らの生涯を全うした者。

英雄という称号を手にした者の行く末には、至上の幸福が約束されるという。


しかし多くの者たちがそれに焦がれ、

夢と現実の狭間でその身を散らしたように、

彼の場所へ辿り着くまでの道は──遠く、罪深い。


果てなき血の洗礼に身を晒し、

幾度となく死神の鎌に身体を切り裂かれ、

数多の生ける屍を踏み砕き、それでもなお己の道を信じ、

眼下の闇を踏み超えた者にのみ、その名は与えられる。


だが──その者は違った。

その者は、忌まわしき呪いの道を

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