第13話 ある夜


私は私、大丈夫


今日は冷たい雨と風。夜の町を走る。


頼りない折りたたみ傘と

ガタガタいってる自転車と

雨をいともたやすくすり抜ける服


もしかして自分はひとりぼっちになってしまったんじゃないか

そんな気さえする


飛び去る車は笑い

作られた明かりは見下し

派手な看板の字は踊り出す


ねえだれかだいじょうぶっていって


冷めた風を受ける傘の骨が

回され続けるペダルが

重く重く沈んだ布が


世界はこんなにももろく崩れてしまう

全部作りもののような気がして


私も今夜崩れてしまいそうで


ああ私ってこんなに弱いんだ

そう思わせる夜




ため息をひとつ

ふたつ重ねて


あなたは今どこに行くの


星のない夜の心細さ

雲だらけの夜のもどかしさ


もうすぐみんなゆめをみる時間

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