第9話 ばくだん

爆発した。


どういう理由があったら人の頭が突然爆発するんだろう。


目の前の茶髪の足の長い女性は、かっこよくピンヒールで歩いていたのに、


手に持っていたスマホは衝撃で吹っ飛び、今車にひかれた。


僕はだけでなくしばらく周りは止まった。


動けない、だけど誰かが悲鳴をあげ、


よくわからないままに急いで走った。逃げた。どうしたらいいんだろうどこに逃げればいい。何から逃げているのか。



爆発した。


僕の真後ろにいた男の人。


僕は倒れてくるその体から逃げた。人生で1番情けない声が出た。


腰が抜けた。立てなかった。もう歩けないし走れなかった。



爆発した。


爆発した。


連続して起こったようで、なんともいえない音と悲鳴と火薬の匂いが辺りに立ち込める。


次は僕の番だ、となぜか思った。



爆発した。


黒い車の運転者の頭がなかった。それなのに、


車は道路の真ん中でへたり込んでいる僕に向かってくる。僕は僕は。


もう逃げられなかった。



爆弾は誰の頭にだってある。


いつか爆発する。


だけど僕はこのまま爆発できないまま車にひかれて死ぬんだろう。


爆発したい。


僕だって爆発したい。みんなみたいに、自由になりたい。



爆発しなかった。


車は僕の横を通り過ぎていく。


「危ねえな!気をつけろ!」


僕は車にそう言われた。街はいつもと同じで平和で、火薬の匂いも悲鳴も何もない。


目の前の茶髪の足の長い女性も、真後ろの男の人も、黒い車の運転手も、誰かも僕も、


みんな不発弾だ。


いつともしれない爆発の時を待つ爆弾だ。



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