第十二話 これを幸せと言うのだろう

 三日目についてはダイジェストでお送りしたいと思う。別に尺が足りないとか、そんなんじゃないんだからねっ!


 三日目の午前中は二度目のスキー実習を行った。二日目にてんでできなかったのが嘘みたいに滑ることができた。カレン先生がとてもほめてくれているのはわかったがなにを言っているのかはわからなかったので、うれしいような悲しいような気持ちになった。


 スキー実習が終わると、自由班で札幌を観光した。小樽の二の舞にならないように意気込んだが、悲劇は起こってしまった。

 事前に調べておいた場所に四十分かけて向かったのだが、行きたかった場所と調べた場所が違い涙を呑むはめになった。


 そこからはもう地獄である。


 完全にテンションは下がりきり俺たちはゾンビみたいな足取りで移動し、雪印パーラーでほっぺたが落ちるようなおいしいパフェを食べてもその時しか気分は晴れず、終始イライラがつきまとうことになった。


 最後に夕食を取った後、俺はどんよりとした気持ちでホテルの部屋へと戻ったのだった。


 ダイジェスト終了。


 まあ、そんなこんなあって今はホテルで室長会議を行っている。今日は明日のスケジュールの確認だけで終わり、なにか小言をもらうことがなかったのでスムーズに終わった。


 室長会議が終わると、みんながわらわらとエレベーターに向かっていく。俺はその人ごみの中から双葉を探しだし、会いに行った。

 昨日とは違い特に要件はないけれど、双葉と話したいと思った。


「おはよ」

「おう、おはよ」


 いつものように謎の挨拶を交わす。今午後の十時ごろなんだけどね。


「明日、楽しみだな」

「そうだねー」


 双葉は眠いのか瞼をこすりながら間の伸びた声で言った。


「眠いのか」

「うん…今日はしゃぎすぎて…」


 小さくこくりと頷く。会いたくても会えない時間が続いたからか、その仕草だけでも俺はときめいてしまった。女子かよ、俺。


 双葉はかわいらしい欠伸をすると、俺の方を向いて小さく笑う。



「明日、楽しみだね」



「そうだな」


 彼女につられて顔が自然とほころぶ。もしかしたら、俺は修学旅行中こんな時間をずっと求めていたのかもしれない。

 それに、俺は少し欲張りなのかもしれない。


 そんなことを、ふと思った。

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