第二章 初デート
第一話 その後
忘年会の帰り際、一香や端島たちは変な気を利かせて、俺と双葉に最寄駅まで一緒に帰るように促した。
双葉は恥ずかしがって、全力で拒否していたが、やぶさかではなかったのか、最後には俺と一緒に帰ることにしたようだった。
「俺たち、リア充になったんだな…」
「そうだねー…」
「…」
「…」
「いや、まさか今日こんなことになるとは思ってもみなかったな」
「オレも」
「…」
「…」
会話、全然続かねえな!
最初はこんなものなのだろうか。それとも、俺のコミュニケーション能力の問題?
せっかく一緒に帰れるというのに、間が持たなかったら意味がない。というか、悪印象を与えそうですごく怖いんだけど…。
自然に切り出せる話題はないものかと頭を悩ませていると、びゅおっと強い風が吹いた。
「寒っ!」
すると、双葉は体をぶるっと震わせ、体を抱くようにして身を縮こまらせた。
「そんな服着てるからだろ…」
双葉の服装は、冬だというのに肩も足もこれでもかと露出しており、羽織っているのは薄手のコートだけだった。
今日は風が強いから、セーターを着ている俺でも寒いのに、双葉はどれだけ寒いのかなんて想像もできなかった。女子はオシャレのために身を張るとは聞いたことがあるが、これほどまでしてするものなのだろうか。
俺の呆れたような呟きを拾って、双葉は前を向いたまま言った。
「勝負服だから…」
「…」
そう言われると、何も言い返せなかった。その言葉に込められた意味を考えただけで、俺は胸がいっぱいになってしまった。
再び無言の時間が流れる。
俺はこの空間に耐えられず、なんとかして言葉を吐き出した。
「なんかさ、付き合ったって実感、湧かないよな…」
「そうだね…」
双葉の反応から、俺は話題の選択を間違えたかと思った。でも、すぐにそれは被害妄想だったと思った。
「でも、そのうち、湧いてくるもんだと思うよ…わからないけど」
「そんなもんか…」
「そんなもんだよ」
もしかしたら、双葉も俺と同じ気持ちなのかもしれない。彼女は俺と違って、何度も付き合ってきているから、俺の思い違いかもしれないけれど。
そうやって、ぽつぽつと話しながら、俺と双葉は駅まで帰った。
帰りの電車の中で俺は、ようやく訪れた喜びに頬を緩ませ、それを周りの乗客に悟られまいと必死にこらえながら、帰宅したのであった。
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