第十四話 突然に

「そろそろお開きだねー」


 一香が時計を見ながら、力の抜けたように言った。

 時刻はそろそろ六時。冬真っ盛りのこの季節では、もう外は真っ暗になっていた。

 皆、ゲームで疲れ切っているし、一香の言う通りそろそろお開きの頃合いだろう。

 そして、解散となると、この後重要なイベントが俺を待っている。




 そう、告白だ。




 しかし、俺の決意は、ここにして揺らぎを見せていた。

 頭から双葉の涙がこびりついて離れないのだ。


 俺が双葉を泣かせちゃったんだよな、きっと…。


 双葉が俺のことを好きだということを知って、少々浮かれていたのかもしれない。

 たぶん、一香と相坂なりの冗談だったんだろう。それにしては、随分と手の込んだものだったが。

 それを、鵜呑みにして…馬鹿だな、俺は。


 だけど、それで気持ちが変わることはない。この気持を伝えたい思いも変わらない。

 でも、俺は彼女を泣かせてしまった。つまり、彼女を傷つけてしまった…。

 そのことが俺の心を締め付けて、踏ん切りをつけなくさせてしまった。


「私、トイレ行ってくる」


 もう本調子を取り戻した様子の双葉、そう言って立ち上がりリビングを出て行った。

 その様子を見ていた一香は、双葉が出て行ったことを見計らうと、俺の方へ寄ってきた。


「ねえ、武野」

「…なに?」


 一香に話しかけられ、俺は一旦考えることを止めた。


「王様ゲームの時の告白だけどさ、あれって本気の返事だったの?」


 一瞬、反応できなかった。よもや、そんなことを聞かれるとは思っていなかったからだ。

 俺は恥ずかしさと気まずさから顔をうつむかせ、素直に本心を言った。


「ああ、そうだよ」

「え! マジで!」


 すると、一香は興奮したように大声を出した。

 そして、素早く立ち上がると、ドタドタと小走りでリビングを出て行った。


 …なんなんだ、一体。


 状況についていけない。

 俺が大量に?マークを浮かべていると、トイレがある方向から、はっきりとその声が聞こえてきた。




「双葉! 武野のさっきの返事、本当だって!」




 …は?




 …………え?



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