第2812話:イツル・マイナ~離れ小島~

「あの島には何があるんだ?」

「なんもないよ、ただの無人島」

「誰も住んでいないのか?」

「ああ、そのはずだよ。ここ数年あの島に行ったという話も聞かないから本当に無人のはずだね」

「そうか……なら渡ることはできるか? 行ってみたい」

「まぁ船が無いわけじゃないが……行っても何も面白いことないと思うよ?」

「人が立ち入ってないならいろいろ見る物はあるさ。渡しの船に案内してもらおうか」


「ありがとう、後でまた戻ってくるつもりだけど、夜になる前に戻ってくれて構わない。明日以降になるなら連絡を入れるよ」

 渡し船の船頭にお礼を言い、島の方に目を向ける。

 うっそうと茂る森、人の手が入っていないというのは本当の話らしい。

「ここなら何か発見がありそうな気がするな」

 誰も見ていない場所というのは未知を発見するのに適している。

 面白いものが見つかるといいんだが……


「人が来るなんて珍しいな」

 誰もいない島だと聞いて、外から見た限りでは人の痕跡は無いように見えたのだが、中に分け入ってみるとすぐに人と出会った。

「何にもない島だけど、ゆっくりして行ってくれよ」

「いや、まずは君のことを教えてくれ。無人島だと聞いてきたのだが……」

「ああ、外の連中はそう思ってるのか。まぁ、俺も表に出たりはしないし、あいつらもここにはやってこない。仕方ない話だな」

「誰もこの島に渡っていないという話だったが、どうやってこの島に?」

「どうやっても何も、俺はここで生まれてここで暮らし続けてるのさ。よくある話だと思うぜ、無人島で生まれて脱出できずに一人で暮らしてる例。俺はこの漂着してた携帯端末を拾えたから外の情報が得られてるけど、他は結構大変かもなぁ」

「なるほど……人が住んでいたのならあまり用は無いんだが、アンタのことは話してもいいのか?」

「構わないよ。アンタが来たってことはここが禁足地ってわけでもないんだろう? だったら知られたところで追い出されることもあるまい」

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