第2083話:サーベ・リスルル~溜まる雨~

「あ、出かけるのは止めておきな。今日は雨が降るからね」

「雨ぐらい平気ですよ、撥水魔法入れてありますから」

「え、いいや、そうかあんたがここに来てから雨は初めてだったね。ここの雨は溜まるんだよ」

「水たまりができるってことですか? 足を滑らさないようにってことならあんまり心配いらないですよ? 足元の水も全部跳ねのけてくれるんで、滑らないです」

「うーん、そういうことじゃないんだけど……まぁ一回体験するのもいいかもね。危ないと思ったらすぐに逃げるんだよ。近くの建物の中に……助けを求めれば開けてくれると思うよ。そうだ、一応聞いておくけどあんた泳げるよね?」

「一応……」

「じゃあまぁ死なないか……」

「死ぬんです?」

「毎年この町では数人の溺死者が出てるんだよ、年一ぐらいで雨の際に人が死んでるからね」

「そんなに……」

「まぁ、気をつけな。できるだけ室内に居ればたいていの場合問題ないとは思うけどさ」

「じゃあ、まぁ……行ってきます」

「生きて帰ってきなよ」

 そこまで言うのかと思いつつ出かけて雨が降ってきた。

 しばらくすると忠告の意味が分かってきた、降ってきた雨がどこへも流れていかないのだ。

 ドンドン水が溜まって水位が上がっていき、すぐに腰の高さは超えた。

 周りの水は魔法でどかしているから自身は濡れないが、胸の高さを超えたあたりでこのままでは水中に完全にしずんで息ができなくなるということに気づいた。

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