第2065話:ミビシ・ユウロ〜其一〜
「其一はないのですか?」
「ん?」
後輩がこの世界にやってきたので、この世界で生きるための心得というものを説明していたのだが、心得其一を言わずに其二を説明してしまった。
これはよくない、先輩としての威厳が保てない。
「えーとだな、この世界では常識的なものなど何一つなく曖昧であるからして、心得がまず其一から始まるという固定観念すら邪魔になるというのがその、だな、其一だ」
かなり苦しい言い訳になってしまったような気がする。
そもそもの話この心得というもの自体が先輩風吹かせるためのでっち上げなのだから他の人に聞かれでもしたらバレる。
「先輩……」
怪しまれたか?
「流石です! 勉強になります!」
よかった、バレてはいないようだ。
考えてみれば我ながらいい言い訳だったかもしれない。
この世界では常識に囚われてはいけない、うん、とっさに出たにしてはいいかもしれない。
その後、なんとか其七まででっち上げて先輩の威厳を保つことができた。
後日、色んな所で俺が話した心得に近いものを聞くことが多くなった。
もしかしてあいつ、色んな所で話して回ってるんじゃあないだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます