第1993話:ジュラリ・リカトム~回転~

「高速で回転している物体は安定するんだ」

 目の前にある回転する謎の物体を指して博士はそう言った。

「このオブジェクトも回転していなければこの安定を保っていることはできないだろうな……」

「このオブジェクト?ってなんなんです?」

「これは世の中の回転を表したオブジェクトさ」

「世の中の回転を表して……?」

 謎のオブジェクトなことはわかった。

「もしこのオブジェクトの回転が遅くなったとしたら、それは世の中が滞っているという証左に他ならない」

「なるほど、今はぎゃんぎゃん回ってるってことは世の中は無事ってことですか」

「そういうことだね。もし、世界の回転が滞るようなことがあればこのオブジェクトの回転も遅くなり、安定性を欠いて崩壊してしまうだろう」

「もし逆に、このオブジェクトを無理やり止めたりしたら……?」

「止まらない、ありとあらゆる抵抗を無視して回転することができる」

「つまり……?」

「さらにここからエネルギーを取ることもできる。実はこのオブジェクトから回転エネルギーを取り出し、モーターに繋げてある。無限に発電ができるようにな」

「は、発電ってそんな俗なことにこんな世界の監視装置みたいなものを使ってしまうんですか!?」

「ああ、そうだ。物理法則や技術形態が違う世界産技術のコラボは不可能をも可能にすることができるんだなぁ。この研究所はこの世界が円滑に回転している間は安泰というわけだな」

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