第1962話:メシル・プルラリオ~無料~

「おいしかったよ、いくらだい?」

「お代はいらんよ、タダだ、タダ」

 昼食を食べてお代を払って出ようと思ったのだが、どういうわけか値段は0パソだった。

「タダ!? 無料って本当にいいのかい? 結構いい料理だったと思うんだか……」

「ああ、いい。もう俺は金もいらないからな」

「どうしてだい? まぁ、この世界なら多少は収入が無くても生活することは余裕だし、収入はいらないというのも一つの考え方だけど、お店をやり続けるならお金のプールはあった方がいいだろう?」

「ああ、通常はそうだ。しかし俺はもういらないのだ。理由は……まぁなんでもいいだろう、さっさと帰るのだよ」

 そう言って追い出されてしまった。

 うーん、彼が突然何か無欲に目覚めた可能性もあるが、何か様子が妙だった。

 払うと言っているのに追い出されたようなものだった、何か代金を受け取るわけにはいかない理由があったんじゃないか。

 ……と考えていても理由が思い当たるわけでもない。

 ちょっと気持ち悪いが、ラッキーだったと思うことにしよう。

 そう思い出もしないと、さっきのおいしい料理が台無しな気分になってしまうからな……

 いや、ちょっと周りの人に話を聞いてみることにしようか。

 いつから無料なのかとか、聞けばわかるだろう。

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