第1856話:エスゥ・パリオン~たられば~

「あの時な~」

「何を振り返ってるんだ?」

「昨日のことなんだけど、すごい失敗をしたからそこさえどうにかなってたらな~って思ってさぁ」

「たらればは言っても仕方ないからなぁ、でもどんなことがあったのかは気になるから聞かせてもらってもいい?」

「うんー昨日さぁ、まず家に帰る途中にね? 普段通らない道を通ったんだけど、そこでめちゃくちゃいい雰囲気のお店を見つけたの。

 それで気になって入ってみたわけなんだけど、中には何もなくて、入る前に見えためちゃくちゃいい雰囲気の内装はどこにもなくてさ」

「うん?」

「少し考えて何かの罠にひっかかったことに気づいて慌てて外に出たらもうそのお店自体は消えちゃっててさ」

「うん、脱出できたんだ。じゃあ何でたらればしてたの?」

「いや~、見つけた時に入らずにしっかりと外からもっとめちゃくちゃ観察したり写真撮ったりしてればよかったんだよなぁ……」

「そこ?」

「だってさ、あのお店はたぶん見た人の心理を読んで完全な理想の店構えを構築して人を誘い込むタイプの怪異だと思うんだよね」

「いますねそういうの」

「私自身もちゃんと理解していない最高の店構えがそこにあったのに記録することなくそれを逃してしまったっていうのが本当に悔しくて悔しくて……」

「ああ、そういうこと……」

「もしくはもうちょっと煩悩を抑えて店に入れば店内の様子も見れたような気がするし……」

「それはどうだろう」

「私の興奮具合にびっくりして怪異が逃げ出したから何もない店内になっちゃったと思うんだよね」

「そういうことなの?」

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