第1853話:アチコ・ソチコ・ノチコ~ふかふか~
「あれはずいぶんとふかふかだったよ」
そう思い出を語る老人がいた。
俺はその責に途中からきてそもそもの主題のことについて聞けていないのだが、何やらふかふかしていて、人懐っこくて、かわいいという話だ。
珍しい愛玩動物の話でもしているのだろうと思って、端で聞いていると耳を疑う情報が追加された。
「私の脚はあれに切断されてね」
愛玩動物だけど狂暴なこともあるのだろうか。
人の脚を切断することがあるとは。
元々は狂暴な野生動物であったものを訓練としつけで人に害を及ぼさないようにした動物なのかもしれないな。
普段は平気なんだが、何かの間違いで人を殺すこともあるくらいの狂暴な動物なのかもしれない。
そんなものをペットとして飼うなんてこと自体が恐ろしい話だが、いろいろな人がいるからな。
いや、何かおかしい気がする。
だんだん話の盛り方が妙な方向に変わってきたのかもしれない。
あの老人も随分と飲んでいるようだし、いろんなものの話が混ざり合っていても不思議ではない。
ふかふかで人懐っこくてかわいくて人の脚を切断することがある愛玩動物なんているわけがない。
人の脚が切断できるうえでふかふかな動物もそういないだろう。
そんな動物は大抵ごわごわになっているものだ。
そして人懐っこいなんてこともない、大抵は殺意を持って食べにくるか排除しに来る。
そしてゴワゴワで殺意を持って排除しに来る動物はかわいくはない。
万が一あるとしたら、かの老人がとんでもなく強い何者かでそういった猛獣の攻撃をじゃれつきと認識できるレベルであるということだ。
そうなれば人に寄ってきてじゃれついてくるかわいい動物だと言えるだろうし、もしかしたらめちゃくちゃ強ければゴワゴワの毛もふかふかにできるのかもしれない。
そうして生活して衰えてきたころに脚を切断されることもあるだろう……
いや、無いだろうな。
単純に酔っていて何かと何かがこんがらがった思い出話をしているに違いない。
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