第1819話:リブーツ・イティ~鞍替え交渉~
「大地の力を、見ろ……!」
追い詰められた彼女はそう叫び、目の前の大地は隆起した。
どういうからくりかはわからんが、そういう技の持ち主なのだろう。
隆起した地面は壁となり、行く手を遮る。
なんとかその壁を乗り越えた時には彼女の姿はどこにもなく、任務は失敗だった。
「なぁ、あれどうやってやったんだ? 地面を隆起させたやつ」
その後、任務とは関係なくやつを見つけたので聞いてみた。
「!? あなたは……!」
「あー、大丈夫。もう身構えなくていいよ。俺がこないだお前を追っていたのはそういう任務だったからだ。もうその任務は失敗ということで完了しているから俺はもう追っ手じゃないよ」
「そうは言っても情報を流されたらたまった物じゃありません」
「いやー、俺はフリーランスだからな。もうあいつらとは関係ないよ。今回の任務の失敗で完全に切られちゃったぜ。そうだ、今後も君をあいつらが狙ってくるかもしれないから、俺を護衛に雇わない? 資金には困ってないから君の身の上話とか、あの技のこととか聞かせてくれると嬉しいなぁ。俺はあいつらから何も聞かされずに君を狙わされてただけだからさ」
「本当ですか?」
「ああ、もちろん本当さ。それにこないだの追いかけっこで俺の実力は見ただろう? 君を捕まえることこそ適わなかったが、君をあいつらから守ることぐらい訳ないぜ。ただ、少し生け捕りが苦手ってだけだからな」
「確かにそれなら……」
本当にこれで取り入れるとは思わなかった。
任務とは無関係なのも、この子の身の上に興味があるのも、話した内容は全部本当の話だが、ここまで簡単に信用を得られるとは思わなかった。
これなら最初から声をかけて説得した方が早かったかもしれないな。
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