「この辺の名物ってなんです？」

「名物……？」

「なんか「この辺といえばこれ！」っていう物のことなんですけど……」

「うーん、なんにも思い当たらないなぁ……」

「そうですか？」

「うん、まぁ俺もここでしばらくうれま屋をやってるけども、他でもあるだろう？」

「うれま？」

「うれまっていうのはこれよ、ウルキの実を潰して作った粉を練ってだな、いろいろ足して味付けしてこの形に成型して焼いたもんのことを言うんだよ」

「私いろんなところへ行ってるけど、これ見たことないですよ！　ここらだけの物じゃないですか？」

「そうなのかい？」

「ええ、きっとそうです！　このうれまっていうのをこの辺りの名物にしましょう！」

「なるほどなぁ、このうれまが名物かぁ……そいつはいいな」

「なぁ、名物っていうのは結局どういう意味があるってんだ？」

「何の話さ？」

「こないだよぉ、旅人がうれまをこの辺の名物にしようって言いだして、名物ってことにしたんだけども毛局なんも関係ないよな？」

「まぁ、そうだ。名物ってことを推したりするキャンペーンとかしないとなんも意味ないだろうね」

「お前、名物ってのが何か知ってるのか？」

「そりゃあまぁ、知ってるけども。そもそもあんた知らないの？」

「こないだ初めて知った……」

「そりゃあ、名物にしても意味ないな」

「そういうもんか」

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