第1632話:ヘーシング・ウルトルン~混沌アトラクション~
「これ、設計者は何考えてたんだ?」
入口から少し覗いただけで帰りたくなってきた。
「話ではこの最奥には富と名声が収められているらしい」
「富はわからんけども、名声は手に入るだろうよ。こんだけの見える罠の最奥までたどり着けて戻ってくるんだからよ」
そう表現されるそれは、まるのこや鋭い刺が壁や床や天井のあらゆるところから生えた通路。
「いろんなところに血がこびりついてるしさぁ、何人死んでるんだよこれ」
「さぁ、記録には残ってないからわからんね。しかし、死体が残ってないことを考えると皆生き残って撤退はできてるのかもしれないな?」
「死体を片付ける仕組みが用意されているのかもしれないよ?」
「いやだなぁそれは……」
なんというか、人が死ぬ前提で用意された仕組みというのが嫌だ。
「でも人を殺す前提の設備には必須な仕組みだからな」
「それはそうなんだけども……そうだ、いいことを思いついた」
死体を自動で回収する仕組みがあるというのであれば、それを利用してやればいいんだ。
「たぶんギミックに何か引っかかったら作動してくると思うんだよな」
昼に焼いて食べようと思って用意しておいた生肉を適当に放りこむ。
起動した丸ノコにうまいこと肉が絡んだ。
止まるようなことはないが、しばらく回って、回って、生肉が原型を保たなくなって、霧散して上に設置されている吸気孔に吸い込まれていった。
「帰るか……」
丸ノコで霧状になるまで削られて、吸気口から吸われたくはない。
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