第1507話:ウイルデ・チエデ~模倣戦争~

「この戦争の結末はどうなると思う?」

「そうですね、私は浅学故に指示通りに動いているだけですが、我々の陣営が不利だと思われます」

「そうだよなぁ、無為だよなぁ」

 今は戦争の最中、しかしこの戦争は結末が決まっているらしい。

 戦争の名は模倣戦争。

 かつてどこかの世界で行われた戦争の模倣をした戦争。

 戦争の記録の整合性を確認するために行われるこの戦争シミュレーションは、戦争の参加者として実際に参加したと言われている人数が駆り出されて役を務めている。

 その際に、参加者の選定基準として戦争の結末を知らないことが条件になっているので、全員戦争の結末を知らない。

 脳に直接送られる指示通りの場所へ移動して戦う。

 その戦闘では死傷者は出ないようになっているが、実際に戦って規模感からどれだけの死傷者が出るのか等を計算して記録に残っている値との差を見たりするのが目的だ。

 しかし……

「無為だよなぁ……」

 この模倣戦争で私に与えられた役割は指揮官の17番。

 彼女はその補佐役だ。

 模倣戦争中は私たちは役割通りの場所から動くことは許されず、食事も規定の物が支給されるだけだ。

 一応作戦等に目を通させてもらえたりはするが、その情報を元に考えると敗色濃厚。

「無為ですね……」

 模倣戦争自体は学術的に意味があるのかもしれないが、私たちがここにいる理由は実際ないのではないだろうか……

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