第1417話:ゲレイラ・フッティ~壊れた椅子~

「椅子借りるぞ」

「あ、待て」

 制止の声も間に合わず、彼はその椅子に座ろうとしてしまった。

「その椅子壊れている」

 案の定、そのまま盛大に転倒した友人に遅れて忠告が届く。

「いてて、早く言え」

「言うのを待たずに座ったのは君だ」

「しかし、なんでこんな壊れた椅子をこんなデスクの前なんかに置いているんだ。紛らわしい」

 その指摘はごもっともである。

「こないだ壊れたばかりでな、ただ買いに行く余裕が無くてな」

「ならしまっておけ!」

「そうはいっても椅子は必要だろう? 壊れているが、何とか座れるんだ」

「いや、無理だろ。今座った感じ少しでも体重をかけりゃあぺちゃんだぞ?」

 まぁ普通に座ればそうなるだろう。

「見てな?」

 倒れた椅子を起こして腰を掛ける。

「な、何ぃ!!! あの支え棒がほぼ折れているような状態で綺麗に座っているだってぇ!!!」

「そう、この壊れた椅子であるが体重をきちんと通すように掛けてあげるとちゃんと座れるのさ! これも僕の優れた体幹があってこそというものだが……」

「しかし、それ普通に座ってるより疲れないか……?」

「問題はそこなんだよね……、結構腹筋が疲れるんだよこれ」

「さっさと新しい椅子を買いに行けよ」

 ごもっともだ。

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