第1402話:ヒリシバ・ホウテン~夏のローブ~
あの人、この猛暑の中であんな格好をして暑くないのかな。
日よけになるような薄い外套ではなく厚手の外套で全身すっぽりと覆っている。
今日は湿度も高いし、あんな格好では中は蒸し風呂じゃないだろうか。
想像したくもない。
しかも、よりにもよって色は黒だ。
黒い外套なんてこんな日差しの中で着ていたらすぐに熱をため込んで熱中症待ったなしだろう。
そうまでして周りに姿を見せられない理由があるのだろうか。
……気になってきたな、ちょっとつけて行ってみようかな。
怪しい……、というかわざわざ日差しを選んで歩いていないか……?
あれはむしろ熱を集めて歩いているという疑いすらある。
死ぬ気か? 自殺志願者なのか?
倒れたら病院に連れて行ってやろう。
今日の日暮れまでは着いて行ってみることにするか……
いったいどこへ行くのか……
「はっ……! ここは……?」
涼しい部屋で目が覚めた。
「あ、起きました? あなた熱中症で倒れたんですよ」
思い出して来た……、そうだあの謎の厚着野郎を尾行していたんだ……
それで自分の方が先に意識を失って病院に運ばれたと。
なんたる失態、結局見失ってしまったし何者だったかもわからない。
彼の熱中症を心配していたのに自分が熱中症になっていたら目も当てられないな……
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