第1375話:シバレ・リスティ~尻尾~
「――で、ですね……話聞いてます?」
「あ、すまない。なんだって?」
「まったく、いつも何を考えているんです?」
「いや、まぁ、何も考えてなかった……」
言えないよなぁ。
「ちゃんと仕事のことを考えて集中してくださいよ」
「ああ、すまない」
言えるわけがないんだよな、君の尻尾を見ていて聞いてませんでしたなんて。
目の前で長いものが揺れていると、それに目を奪われる。
周期的にぷらぷらしているとどうしてもそれを目で追ってしまい、それ以外の物も音も匂いもすべてが意識の外になってしまう。
これは昔からの癖で以前はあまり生活に支障はなかったのだけどまさかここに来て仕事のパートナーが尻尾持ちで常時ゆらゆらしているとは思わなかった。
どうしようか、尻尾に気を取られてしまうなんて言う話は恥ずかしい。
というか「君の尻尾に気を取られて」なんて申告してそれが何らかのハラスメントに該当してしまう可能性もあるのではないか。
そんなことも気になってしまってどうにも言い出せる話ではないのだ。
しかして、それを言い出すことなく彼女の尻尾を無視し続けることはできるだろうか……
「――聞いてますか?」
「ああ、聞いているさ。もちろんね」
「そうですか、では――」
問題はなんとか解決した、いやたぶんこれは一時的なものだろう。
単純に彼女の服装が変わって尻尾が目立たなくなったんだ。
次衣替えするまでに対策を考えなければならないな……
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