第1325話:フテレット・バンドル~毒蟲~
森の中、毒蟲に噛まれた。
腫れて痛みはあるがすぐに死ぬといったものではなさそうだ。
とりあえず刺されたところを縛って止血する。
何の蟲かはわからない、噛まれた途端に逃げられた。
解毒剤、無い。
さっさと逃げ帰って病院に行かなければならないな……
「しかして……」
やけに森がざわつき始めた。
噛まれる前は静かだったんだ、風が吹いてる音が小さく聞こえるぐらいの静かな森。
それが今では草木の擦れる音がやけに大きく聞こえる。
毒の影響で聴覚が拡張されているのか、それとも本当にざわめいているのか。
急いでここを離れた方がよさそうだ。
息が切れてきた。
この森はこんなに広かっただろうか。
地図を出し、現在地を確認する。
「……? なんで森の奥に進んでるんだ?」
自分の位置を確認したら森から出るのとは逆方向に進んでいた。
まさか……方向感覚が破壊されている?
地図を見て方向を逐一補正しながら進んだ方がよさそうだ。
周りから聞こえるざわめきが大きくなってきた。
……思ったよりも厄介な毒だったかもしれない。
森の外に向かって歩いていると蟲が四方八方から飛び出して来た。
さっきまではこんな襲われ方しなかったぞ、森がざわめいていたのはこいつらが群れで移動してきた音か。
おそらくそういう蟲なのだろう。
まずランダム索敵をしている蟲が対象にかみつき方向感覚を狂わせる。
そしてぐるぐる迷っているうちに噛み跡からフェロモンのようなものが出てそれを頼りに他の群れが集まってくる。
何とも厄介な……
なんとか生きて森を出たい……
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