第1297話:――――~治めの儀式~

「~♪」

 今日は年に一度の治めの儀式。

 歌って踊ってそれを神様に奉納することで次の一年間の安全を保障してもらうというものだ。

 所謂お祭りの日ではあるが、身の丈大人の10倍はあろう神様がそこで見ているため、緊張感はすさまじい。

 一季前から念入りに練習して、絶対に失敗は許されない。

 10人で輪になって一糸乱れぬ動きで歌い踊り続ける。

 私が知っている限りでは、この儀式が失敗したことはない、大丈夫。

 そんな気持ちでやっていたからか、単に運が悪かったのかはわからないが、失敗した、儀式の最中に跳ぶところでタイミングを間違えて、一人で跳んでしまった。

 一人で跳んで着地したとき、みんな私を見ていた、私のせいで失敗した、そのことを確認するように皆足を止めて私を見ていた。

「こらぁ! 続けろ! 足を止めるな! まじめにやっているのか!?」

 呆然自失となっている私に向けて村長からの怒声が飛ぶ。

 練習の時に幾度となく聞いた怒声だが、今日の村長の表情には余裕がない。

 その怒号を聞いた皆は儀式を再開しようとするが、どこまでやったのかをだれもすぐには思い出せず皆おろおろするばかりだ。

 私にだけではなく、皆に向けるように村長の怒号は大きくなる。

 同調して村長以外も皆こちらに怒声を飛ばしてくる「なにやってんだ」「早く再開しろ」「急げ」「愚図」「鈍間」

 もうだめだ、全員パニックになって儀式の再開どころではない。

 私も一周回って落ち着いてしまったが、儀式の次のステップはもう思い出せない。

 そして、周りの怒号が突然に止んだ。

 村長が恐怖の表情で固まっていて、その視線は私の方を見ていない。

 その視線を追うと、先ほどまで座っていた神が立ち上がっていた。

 あ、儀式に失敗したから怒っているんだ。

 こちらに手を伸ばして来て、私を潰そうとしている……? と思ったら、村長が摘み上げられた。

 何がおきているのかわからない、状態で見ているとそのまま村長は食べられた。

 次々と先ほどまで怒号を飛ばしていた人たちも食べられてしまい、私達踊っていた10人だけが残った。

「煩わしい者共は食った、続きを」

 喋った、神は私達以外の人をすべて平らげた上で儀式の再開を求めてきた。

 しかし、私達にはもう立ち上がることはできない、恐怖と、パニックと、極限状態での疲労だ。

「無理だ」という意思を込めた否定の動作を見た神はひどく落胆した様子で、こちらに手を伸ばしてきた。

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