第1263話:タンガリューグ~終わりの後に一人生きる者~

 ある日、リチフォーツという街の酒場でとある不死者の名が挙げられた。

 最初にその名を挙げたのはすでに100年はこの世界で生きている老人。

「……タンガリューグってまだ生きてるのかな」

「あー、タンガリューグな。どうかな、あいつは不死だからなぁ」

「タンガリューグ? なんだいそれは」

「リチャーガルクという世界が滅びた時に現れた不死者さ、世界を旅しながら人を探して回っていたんだよ」

「へぇ、世界の終わりを旅した不死者ですか、なんかロマンがありますね」

「その時に生きていた人にとってはたまったものではなかったけどね」

「私を看取ってくれたのは彼だった。あの時点であの世界に残っていた人類は本当に数える程度しかいなかったはずだ」

「へぇ、おじいさん結構最後の方の人なんですね」

「しばらくタンガリューグとは一緒に旅をしていたんだ、事故で私だけ死んでしまったんだけどね」

「僕も彼と過ごしたことがあるんですよ、最後がさみしくないようにって回ってるって言ってました」

「記録によれば最後にリチャーガルクからの転生者が来たのはもう10年以上前の話らしいからね、もう完全にあの世界に人はいなくて、もし死んでないとするのならばタンガリュークだけがあの世界に取り残されていることだろう」

「ああ、一人で寂しがっているんじゃないだろうか」

 そう言うと彼に思いを馳せているのか目を瞑って顔を上に向けた。

 どうしようか、顔を見せに行った方がいいだろうか。

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