第1248話:ヒルシ・ポフィング~機械腕~

「そっちにあるパーツ取って」

「そっちってどっちだい、これかな?」

「違うよ、A-15-Lを取ってほしかったの」

「最初からそう言ってくれないか」

「人に寄生してる状態で文句言わないでよ」

「仕方ないだろう、私は離れられないんだから」

 先日、ひょんなことからこの喋る機械の腕が背中に刺さってしまった。

 刺さったこと自体は病院で見て貰ったり、なんやかんや対処はしようとしたが、骨に根を張っているらしく取るのには手術が必要だというのと、肘を折って懇願されたので、結果的にそのままになってしまった。

「私は便利だぞぉ? 君よりも頭が良く自律思考しする腕が一本増えたんだ、適切に指示を出せば作業効率は数倍になる」

 きゅいきゅいと腕は動き回るが口も回る、しかしてもともと孤独を愛する私としては煩わしさがある。

「私としては意思疎通がうまくいかない同僚と一日中フルで同居することになったような物なんだけど」

「辛辣だなぁ」

「突然日常に侵食してきた謎の腕を渋々とはいえ受け入れているだけ寛容だと思う」

「君の生活レベルは向上しただろう?」

 確かに朝は起こしてもらえるし、朝食も立ってるだけで作ってくれるし、服も考えてくれる、だいぶおしゃれで健康的な生活ができるようになった。

「私は今までの結構低い生活レベルが好みだったんだよ」

 まぁ、それはそれとして作業を手伝ってくれるのはいい、意思疎通さえどうにかなればもっと便利になりそうな気はするが。

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