第1199話:メンミィ・フオルブ~原初の呪い~
「生前に受けた呪いがずっと心身を蝕んでいるんだ」
カウンセリングにて、ずっと心を蝕んでいるこの呪いを吐露する。
「それは変ですね、この世界に来るときにすべての呪術的なものは解呪されるはずですが」
魔術的なもの、呪術的なものも、物理的なものも、後天的に与えられた形質はよっぽどのことがない限りこの世界には引き継がれない。
一般的にそういうことになっている。
「一般的に言う呪いのような、誰かに術式を用いてかけられた呪いならばそうだろう。しかしね、単なる言葉によって心にかけられる呪いは、身や心が生まれ変わったとしても記憶にある限り縛るんだ、これこそが原初の呪いの一つというものさ」
「なるほど、所謂心の病、まぁ外的要因によるものですので、呪いということにしておきましょうか。今日はその呪いの解呪が目的で?」
「わざわざ言い直さなくてもいいよ、心の病気だってことは自覚してるからさ」
この呪いとは長い付き合いで、よく知っている。
「わかりました、具体的にどのようなことの悩みがあるのですか?」
「決定権を得るのを極端に避けてしまうんだ」
「もう少し具体的に」
「例えば、何かを決定してほしいみたいなことを僕に頼もうとしても、僕はそれを断ってしまう。ただ、他人の意思決定には多大に影響を与える」
「よくある責任を苦手とする症状ですね。それを呪いと表現するということは原因に心当たりでも?」
「ああ、生前は物心ついたときからずっと決定権を与えられずに生きてきた、与えられたときは決定を否定されて、成長してからもこれが呪いのようにつきまとってさ、他人に決定権を委譲して決断のヒントを与えて代わりに決断してもらっていた。そうやって呪いはどんどん大きくなって、今に至ってはまったく身動きができないほどになってしまった」
「今日ここに来たのは誰の決定ですか?」
「友人に、僕がいかにもまいってるという様子を見せて「カウンセリングに行ってきた方がいい」って言ってもらってようやくというところです」
こういう生活をずっとしてきたから、今更変えられるのか、そういう不安がある。
「そうですねぇ、不安なのはわかりますけどあなたはなんだかんだそれでうまく生きているので問題は無いんじゃないですか? まぁ、問題は無いです。いままでの生活を続けても大丈夫ですよ。こう断言した方がいいですね」
「ああ、助かります。断言してもらえると、すごく楽になります」
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