第1111話:ミイサン・ボライト~それは理由で互いに不要な物~
「君には失望したよ」
任務に失敗した。
単なるミスでの失敗であれば取り返しはつくのだけど、今回の失敗は見方によれば僕がわざと失敗して台無しにしたようにも見えるだろう。
『僕ならできる』という信頼ではなく、『僕ならやってくれる』という信頼を裏切ったという形だ、前者ならまだ挽回のチャンスはあるのだけど、後者はもう挽回も何もない。
まぁ、実際のところこの組織のやり方に納得がいかなかったので、組織に最も大きなダメージを与える方法で任務を台無しにしてやったのは事実だし、二度とこの組織からの仕事は受けてやらないという勢いでの行動だったのは確かだ。
「二度と顔を見せるな」
ほら、追い出されてもしかしたら後は殺すために刺客を差し向けられるかもしれない。
僕はそんなのに殺されない自信があったからこそ裏切ったわけなんだけど。
たとえこの場で彼の護衛が全員同時に襲い掛かってきてもいなしきれる自信がある。
「では、これで失礼します」
彼も言いたいことは言っただろう、背を向けてその場を去る。
「ちょっと待て、いやそのままでいい。顔を見せるなと言ったのは私だからな。二言は無い」
「何か言い忘れでも?」
足を止め、振り返ることなく尋ねる。
「そうだ、退職金というには少し価値がありすぎるが、君に最後に渡しておきたいものがある。ロビーに手配しておくからそれだけ受け取って帰ってくれたまえ」
「……? わかりました、ありがたく受け取っておきます」
なんだろう、碌なものではないと思うが。
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