第1067話:チエメ・カラツキ~消えたはずの物~
おかしなことが起こった。
「今これは捨てたはずじゃあなかったか」
引っ越してきて、家具の運び入れもだいたい終わって、さぁ箱の処分をしよう!と意気込んで処分した空の箱が今ここにあった。
「まだそれ捨ててなかったの? 早く捨てに行ってきてよ」
「いや、今捨ててきたんだよ。見てただろ?」
「外に出るところまではな、外に出た瞬間捨てることを忘れて持って帰ってきちゃったか?」
「おかしいなぁ。また捨てに行ってくるよ」
「まただ……」
箱を捨て、部屋に戻るとまたもや箱はそこに有った。
「今度は見てたよな?」
「見てた、箱を持って出たのも、手ぶらで帰ってきたのも。そもそもお前が出るのを見送った時点でその箱はそこにあった」
「お前のいたずらじゃないよな? 隠してた箱を出た隙に出してきてからかってるとか」
「俺がそういうことをするようなタイプか?」
「しない」
こいつは面倒なだけのいたずらはしない。さっきからずっとカップを洗っているから手は濡れているのに、箱の方には濡れた形跡がないということもあって、疑いの対象ではない。
「で、どうするよこれ」
部屋から出すとここに戻ってくる箱だ、処分できない。
「うーん、仕方ないからしまっておくか。部屋から出さなければこの場所には戻らないだろう。箱だからな、そのうち使うこともあるだろうし」
「それが妥当だよなぁ」
「あ、昨日のってもしかしてこれじゃないか?」
そう言って見せられたのは町内会報のゴミ出しルールのページ。
「なに? 資源ごみは毎週緑の日、それ以外の日に出されたものについては強制送還の対象となります」
あー、昨日は青の日だったか。
前のところとはゴミ出しのルールもペナルティも違うんだな。
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