第1022話:ミトカゲ・トラム~運命の輪~

「いってきます」

 靴を履いてドアを開けて、外に踏み出そうとする足をいちど止め、靴箱の上に置いてある車輪を時計回りに回す。

 からりと一回転、これはおまじないのようなもの。

 今日もいいことありますように。


「今日も雨か……」

 勢いよく家を出てみたけど、雨だとそうそう勢いが持続するような物でもない。

「ゆっくり行こうかな」

 雨は傘があれば濡れないけど、私は道路の水たまりという物があんまり好きじゃない。

 昔、一度開いてるマンホールに踏み込んだからかもしれない。慎重に道路の七割ぐらいの場所を選んで歩く。

 傘をくるりと反時計回りに回す、手持無沙汰でくるりくるりと時計回り反時計回りと適当に回しながら歩く。

 そんな中、からりと聞き覚えのある音が聞こえた気がした。

「おまじないの車輪?」

 ピンときたのはそれだけど、通学中の道路だ、こんなところにあるわけがない。

 気のせいかな?

 まぁ聞こえたからってなんだって言う話ではあるんだけど。


 うーん、今日はなんだか運がいいような気がする。

 学校ついて少ししたら雨は止んだし、下駄箱に普段入ってるよくわからない怪しい封筒も入ってなかった、廊下で誰かとぶつかることもないし、昼休みの屋上で誰かと鉢合わせて気まずくなることもなかった。

 帰りまで雨が降り出さなければ、朝は車で送ってもらったから傘を持ってきてないあいつも私に絡んでくることはないだろう。

 うん、今日はいい日だ。

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