第969話:リスルア・テラスト~死後、映す鏡~

 死後の世界では、生前の行いを見て刑罰を与えられるという。

 結構よくある話だよね。

 死後苦しみたくなければ生前善い行いをしなさいっていう、教育とかそういう話。で、その際に行いを確認する道具として鏡を用いることがある。

 まぁこれも割と普通の話。

 姿を映す物といえば鏡で、鏡が無い世界では水だったりとかするわけなんだけど、まぁ基本的には鏡を使う。

 そして、

「今ここにその生前の行いを映す鏡がある」

 ゴトリ、と重い音を立てて置かれたそれはゴテゴテと派手な装飾がされていて、趣味が悪いというか、いかにもソレという感じだった。

 そこに映っていたのは……

「ああ、そうだ。これは生前の行いを写すというと少し語弊があってね。なんというか、この世界ではみんな生きているから、生前の行いを写すっていうのはできなくてね」

「つまり?」

 そこに映っているものの意味を考えながら続きを促す。

「見たものの今現在までに積んできた罪に応じて、醜悪さを増す鏡なんだ」

「なるほど……」

 鏡に映っていた自分はいつも通り普通の鏡で見た通りの自分で、これは何の罪も積んでないということになるのかな。

「いやぁ、なんの罪もないみたいで安心したよ。そのゴテゴテしたデザインにビビって損した」

「ん、ゴテゴテ……?」

「え、なに?」

「いや、何でもない……」

 なんだよその含みのある言い方は。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る