第881話:ジューツ・ミグ~ネタ畑~
「ネタが生えてくる畑があるらしい」
「なんだそのやべぇ畑は、どこにあるんだよ」
締め切りが近いのにネタに詰まった作家達が集まってネタ出し会、一人が思い出したように妄言のようなことを言い出した。
「そんなもんはないだろ、ネタはその辺から生えてくるもんじゃあないんだぞ」
「いや、俺は無限にネタが出る奴にどうしてネタを出せるのか聞いたことがあるが、「土壌さえ整えてしまえばネタは勝手に生えてくるものだ」と言っていたぞ」
「誰だそいつ。いや、この世界ならネタが生えてくる畑もあり得ない話ではないだろう、死んだネタが転生してくる可能性だって重々ある」
「それだ」「調べろ、探しに行くぞ」「締め切りがヤバいのでは?」「ネタ畑を見つければ問題は解決する」
なんとなく止めたりも試みてはみたが考えるような状態ではない、みな締め切りに追い詰められて頭がおかしくなっているのだ。
まぁ私も一人で考え込んでもネタなんて出ないのでついて行くことにする。
最初に言い出したやつが怪しい顔をしていることが少しだけ引っかかったというのもある。
「噂ではフクラフグスの方にあるらしい、さっそく行ってみようか」
先導にしたがって歩き出す締め切り限界作家集団の最後尾に付いて私はネタ畑の実態を想像していた。
ネタ畑は驚くほど簡単に見つかった。
というか、奴は最初から知っていたまである。
いろんな人に聞き込みをしていたが、まるで誰に聞けば自然に情報収集ができるかをあらかじめ用意していたような足取り、人選びをしていて私はそれを上手いなと思いながら眺めていて、到着したときにはだいたいネタ畑の正体についても見当がついていた。
「ネタが地面から生えてる!すげぇ!」とわいわい騒いで、三つばかり手ごろな位置にあるネタを拾って全員うなりだした。
「扱いが難しいネタしかないんだけど」
「キワモノというか、これで話を展開させるのめっちゃむずかしくね?」
「俺では技量が足りない……、駄作しか書ける気がしない……」
まぁ、ネタが生えているとはいえ、この世界に自生しているネタなんてものは死んだネタであるわけで、基本的に扱いづらい物がおおいのは当然予想できていた。
後日、その日につぶさに観察して浮かんだネタで話を書いたら紹介してきた奴とネタが被ってしまったのだが、締め切りに追われていたのでさすがにそこまで頭は回らなかった。
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