第861話:アイナン・ライガン~絶叫マシン~

「うおああああああぁぁぁぁ…………」

 悲鳴がドップラー効果で変に延びて聞こえる。

「ああいうのって楽しいのか?」

「さぁ、乗ってる人にでも聞いてみたらどうだ?」

「乗るって選択肢はないのか?」

「いや、まずは念入りな調査の上でな?」

「そうだな、事前の調査は重要だ、しかし基本的に乗っている者は楽しいというバイアスがかかるのではないか?」

「それは有りそうだ。よし、もう少し観察してみようじゃないか」

 ベンチに座ったまま動かないで、もう少し観察していくことにする。


「きゃあああああああ!!!」

 悲鳴が聞こえる。

「あっちのやつは、いくぶんかよさそうじゃないか?」

「確かに、ちょっと向こう見に行ってみようか」

 腰をあげて、向こうのベンチに移る。

「いや、やっぱりそんな楽しそうではないな、普通に……」

「そうだな、普通の絶叫マシンだ、むしろよりアレだ」

「やめておくか」

「そうだな。ん、あっちのはどうだ?」

「あれは……見たところ大丈夫そうだ、まずはアレに乗って慣れることにしよう」

「うむ、そうすることにするか」

 腰を上げて、列に並ぶ。

 次の次ぐらいで乗れるだろう。

「なぁ、やっぱりこれも結構ヤバそうでは?」

「ここまで来たらもう引き下がれん、乗るしかないだろう」

 順が来て座席に座った。


「ダメだ、帰ろう」

「結構楽しかったのでは?」

「そんなことはない、帰ろう」

 おおよそまともな人間が乗る物ではない。

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