第782話:カラバラ・ラブラ~白い街~

「真っ白だな……」

 廃墟なのか遺跡なのか、それとも転成都市なのか、誰もいない大きな建物、城と表現しても差し支えない大きさの、これは、街だ。

 傷一つない白く今一つ材質が何なのかもわからない、質感も謎の建物。

 いつの時代に建てられたのかもわからない。

 そんな不思議な城は探索したくなるのが情というものだ。


 探索を初めて少し経った時、何かがゴムボールみたいなものが弾む音が聞こえてきた。

 誰か他に人がいるのだろうか、ゴム質な体を持っているのか、柔らかい靴を履いているのだろう。

 もしかしたらこの街の住人かもしれないが、入ってはいけないなんてことはなさそうな雰囲気だった。

 出て行けと言われた時に出ていけばいい、気にすることは無いだろう。


「思ったよりも広いな」と屋上らしいところに出て、一息ついているとボールが転がってきた。

 白い、材質の分からないボールだ。

 もしかしたらさっきの音はこいつの音だったのかもしれない、じゃあこのボールはどこから来たのかと、近寄って広い上げようとしたのだが、床に変な歪みでもあるのか転がる軌道は不規則で、上手く拾えない。

 そうこうしているうちに、ボールはまたどこかへ転がって行ってしまった。

「なんか不気味だな」

 幽霊のような見えないものがいるのだろうか、実際にいるのかは知らないが、こういう不思議な街にならそういう不思議な存在がいてもおかしくは無いだろう。

 そういう存在は場を荒らすものを警戒して追い出そうとしてくるという話も聞く。


「……今日のところは帰るか」


 街を出るまで、謎の尾を引く光が視界の端をよぎったり、ゴムボールの音が壁の向こうから聞こえたり、そういった不可思議な現象が多々発生し、迷うはずがない街で迷うなどした。

 二度とこないかもしれない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る