第729話:呪いの本
インビンク メビロの8階層、4-6-7ブロックには立ち入り禁止の札が掛かっている。
このブロックには、所謂呪いの本の類いが収められており、持ち出し閲覧が原則禁じられている。
呪いによる事故や紛失、消失を避けるためだ。
一度棚から失われてしまうと、再収録できるかどうか怪しくなる。
特に呪いの本等は物によるが中を正確に把握できているものが少なく、記憶からのサルベージが困難で100年かけてやっと正確な効果を再現した書になったものもある。
そんな訳で厳格に管理されている棚に数冊、本当に危険な本がある。
その本には、呪詛も呪いの文言も魔法の陣も脳に作用する数式も狂気の絵描きが書いた幾何学模様も記されておらず生命に作用する特殊な材質で作られているわけでもない、ただただ白いページが綴じられているだけの本だ。
本当にそれだけの本、それなのにこの本による死者は非常に多く、一万人を越える者の記憶からの再現書だ。
インビンクのメビロに納められている本は基本的に記憶から記述されていた内容、材質を再現されて本の形をとり、記述外の魔法や怨念による呪死は起きない。
だから、白紙の書で人が死ぬ事などあり得ない。
何らかの作用を起こす記述が存在しない本による呪死、それは原因不明とする他なく、危険な呪いの本として4-6-7ブロックの棚に納められている。
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