第634話:ハルド・フィア~多次元空間~
「多次元空間?」
「そう、他の基本的な……三次元空間とは違う、厳密にいえば空間ではないのだけど、この辺りは軸が多くてね」
「全然わからんのだけど」
「簡単にわかるように言ってしまえば、見えない方向にズレることがある、見えないというのも正確じゃないんだけど……」
「全然わからんのだけども」
選ぶツアー間違えたな……
辺境探索ツアーのコースを小難しい名前の方が面白そうという理由で選んでしまったばっかりに、ていうかツアー客もほかにいないしマンツーマンの本当ならわかりやすい辺境解説のはずなのに、胡乱な目つきのオタクの意味の分からない講義を何の変哲もない、いや多次元空間とか言うんだったかの岩場で聞く羽目になっていた。
「……つまりはこの一帯は物理的に非常に複雑なことになっていて、最悪の場合n次元的にねじ切れる可能性もあるといわれていまして、しかし三次元的に生きている我々にはあまり関係のない話でもあるわけでして、たまに多次元干渉できる人が死ぬこともあるので、お客さんには念入りに身体検査を受けてもらっています」
「死ぬんですか……?」
「お客さんは三次元干渉しかできないタイプの人なので何度もここを訪れたりしない限りは大丈夫です、n次元干渉というのも極めて稀に発生する強い力場の問題なので、基本的に発生するものではないですよ」
そういうもの?なのか……
「あれ、でもそれじゃあツアー担当のあなたは……」
何度も来ているんですよね? と尋ねようと思ったら言い切る前に目の前から消えた。
「僕はもともと多次元を観測して身を任せることができる体質なので、死んだりはしませんよ」
と背後から現れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます