第521話:トマ・マーティ~創作者の呪い~
私は呪われている。
他ならない、私自身にだ。
私は
創作者である私は、創作者であるという理由で私自身に呪いをかけた。
意図してのことではない。
知らなかったのだ、創作者になるということがこんなにも辛く苦しい呪いを受けることだったなんて。
物を作っていなくても退屈で辛く、物を作っていてもうまくいかず辛い。
何か他の趣味を見つければいいじゃないかと知人には言われるのだが、創作は趣味ではない。
創作とは呪いだ。
自身で物語を書くようになって、他者の書く物語がより深くわかるようになった。
大体の創作者は物語に自身の主張を織り込んでいる。
大成するもの程その傾向が強い。
それは作者の成功論だったり、理想だったり、望みだったりと形は様々だが、心の一面を表しているような気がする。
私自身も意図しているわけではないが、自身の書く物語に自身の理想を織り込んでしまっているのだろう。
読んだ他者からの指摘で、自身も気付いていなかった自身の側面に気付かされることもある。
他作を見て他人を見透かすことができるようになると、自作から自身を見透かされるのではないかというのはとても、正確な表現ではないかもしれないが、癖になる。
きっとこれは露出趣味に近いものがあるのだろう。
こんな感覚を体に染みつかせるのは本当に呪いだ。
やめることは出来ない。
一時、書けなくなることはあるが今のところやめるには至っていない。
身をむしばみ、精神を病み、魂を汚染されても、創作をやめることができないのは、私が創作者であるという呪いを私自身にかけてしまったからなのだろう。
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