第346話:エイムス・リアクト~変な武器~
今日は闘技場へ来ている。
腕っぷし自慢の闘士が一対一で戦い、戦闘不能を判断されるか片方が降参を申し出るまで戦い、それを観戦し金も賭けるするという、まぁなんとも悪趣味な施設だ。
たまに死人も出るらしいが、ここにいる奴は誰も気にしない。もちろん、俺も。
さて、今日の対戦カードはどうだろうか。
新人がいるな、どんな戦いを見せてくれるのか。
俺は新人の戦いを見るのが好きだ。
特に、今まで見たことのない戦い方をする新人が好きだ。
この闘技場には、様々な世界の闘士が集まるから、変わった武器や、意味のわからない戦い方をする奴がいる。
最初は新鮮なのだが、慣れてしまえばいつもの戦い方になってしまう。
たまにリベンジマッチ等で新戦法を開発してくる奴もいるが、結構マレだ。
既存の闘士の戦いをいくつか見ていたら、ようやく新人が出てきた。
相手は双鎚の戦士コムノ、あまり勝率は良くないがガッツのある戦いをすることで人気がある闘士だ。
そして新人レクリアスーリクア、武器は、なんだあれ。
パッと見、双頭鎌のように見えたが違う。
長い棒の両端に大きく湾曲した三日月形の刃がついているのだが、刃が大きすぎる。
刃の先端がもう片方の刃の終端に付きそうな程長く、刃は内向きについている。
あれでは刃の内側に相手を収めることができないんじゃないか。
レクリアスは、その奇妙な武器の棒中央のグリップを握って回している。
両者が、闘技場中央で一定の距離を取って向き合い、試合が始まった。
コムノが(おそらく)見たことのない武器に困惑してのことか、開始距離から動かない、隙を狙っているのだろう。
それに対してレクリアスは武器を体の前で盾のように回しながらゆっくりと近づく。
湾曲した2枚の刃が、フィーンフィーンと恐怖を駆り立てる音を重ねて鳴らす、鎌にも見えるその形状から、どこかの世界で語れる死神のようだ、と思った。
あと数歩でお互いの武器が届くと言うところでレクリアスは止まる。
相変わらず、フィーンという音は鳴っている、いや、違う、音が減っている。
レクリアスの武器の刃が減っている。
2枚あったはずの刃は一枚になっていて、棒も半分の長さに。
それはまさに柄の短すぎる鎌、コムノも気づいたのか、目の前のレクリアスから注意を外し、消えた武器の半分を探してしまった。
当然、間合い数歩手前の相手から視線を外してしまえば、それは大きな隙となる。
その隙をレクリアスは見逃さず、一気に間合いを詰め、大きすぎる鎌をコムノの胴体にかけた、ように見えた。
注意をそらしたのはフェイク、コムノは武器の軌道を読んで左手の小鎚で弾き防ぐ。
その時、俺は見た。たぶん、俺以外の観客も全員見た、見ていないのはコムノだけだ。
レクリアスがもう一人いて、消えたはずの武器の半分を持ってコムノの後ろから鎌をかけていた。
勝負ありだ、かけられた刃に気づいたコムノが「まいった」と宣言し、戦いは終わった。
試合はレクリアスの勝ちだった。稀なことだが実は結構あるんだ、新人がベテランに勝つというのは。
新人には正体不明というアドバンテージがある、対してベテランはどんな奇術を使えても、大抵は一度きり、バレた奇襲は通じない。
レクリアスの分身という技ももう次からは通じないだろう。
ん、俺がどちらに賭けていたかだって?
言ったろ、俺は新人を見るのが好きなんだって、好きなものには金を使う、そういうことさ。
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