第256話:~彼に殺された人たちの証言~

「殺されたときの話? ああ、あいつの話ね。あの日俺はいつものように冒険者ギルドで依頼のチェックをしていてね。そうしたらふらっと、そう特に何の経験もなさそうな子供がふらっとね、冒険者登録をしに来てたんだ。俺は珍しいこともあるもんだなぁって思っただけで特に気にしてなかったんだけど、一人ね、たまたまいたんだよ。いっつも弱いやつに絡んで指導料だとか言って金を巻き上げていく奴。案の定っていうか、そいつもいつも通りといった感じでね、その子供に絡みに行ったんだよ。あんな子供に金たかりに行くなんてみっともねぇ、やめてやればいいのにって思ったんだけど、その子供が何か呟いて、気づいたらね、ギルドの中は血まみれ。その血には俺の血も混じっててそのままね、たぶんその場にいた全員が死んだんじゃないかなぁ。まぁ、そんな感じだったよ。俺から話せることはね」


「殺されたときの話しか。普段通りに行商を襲ってな、まぁ上手くいったんだわ。行商人どももの護衛をサクッとやれてな。んで積み荷をいただこうって時にふらっと子供がな、変な雰囲気の子供が現れて何か言ったと思ったらサックリよ。え、何がサックリかって?俺の首がね、最後に見たのは自分の背中だったかな」


「その日は森が騒がしくてな、動物が一心不乱に逃げていっているというのもあったが、ドーン、ドーンと木が倒れる音が響き続けていたんだ。それで音のする方へ様子を見に行ってみたらどうだ、一人の子供がザックザクと剣で木を切り倒しながら森を進んでいる。眼を疑ったが事実として子供が森を荒らしているのは事実だった。魔王の手先かとも思ったがそんな気は全く感じず、やめるように声をかけたのだが、そのままね」


「殺されたときの話……、あの日はどういう訳か城がいつもよりも静かでな。どういうことかと部下を呼んでみても誰も来ない、わざわざ我が直々に様子を見に行ってみると、人間の子供が我の部下の死体の山の中に立ちこちらを睨んでいた。我は直感で覚った。こいつを殺さねば我は死ぬとな。まぁ、この様なわけだが。で、どうしたそんな話を聞きに来るとは。なに?奴が転生してきた?ちょっと魔物ハンターギルドに討伐依頼を出しに行こうと思うが、お主も一緒にどうだ?」

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