第247話:ジャクソス〜文化殺し〜

 僕の国には自由がなかった。

 いや、自由を感じている人は多かったと思うが少なくとも僕には自由がなかった。

 自由に振る舞っている人でさえ、僕に言わせれば不自由の極みみたいな人だと言えた。

 昔はそうではなかったと思うが、単に僕が子供だっだけかもしれない。

 大人になった僕は自由を奪われ、自由を守るために殺されたんだ。


 あの国ではフィクションの物語を楽しむのは子供だとされていた。

 時代の移り変わりと共にそうなったらしいが詳しくはわからない。

 どうせ子供の時に楽しんでいた娯楽を、大人になって余裕のなくなった心では楽しめなくなったから嫉妬して貶し始めたんだろう。

 そして、僕が大人になった頃には子供が楽しむことすら貶す奴らまでいた。

 僕はその頃まだ比較的自由だった。物語に触れ、物語を唄った。

 しかしその自由は長く続かなかった。

 政府がフィクションの物語は現実への興味を失わせ、生命力を低下させるという無茶苦茶な理由で全面禁止にしたのだ。


 僕は反抗した。

 僕と同じ思いを持つ仲間と共に署名を集め、理論を組み立て、政府に物語禁止を撤回させるために戦った。

 そして、何年にも渡る戦いの末に僕らは政府に撤回させることに成功した。


 しかし、長い戦いの果てに僕らの心には物語を楽しむ余裕はなくなっていた。

 子供たちも既にフィクションを楽しむのは悪だと教え込まれていたし、新たに物語が生まれることもなく、過去に存在した物語は全て失われていた。

 文化は国に殺され、甦らせるために戦った僕らは文化にトドメを刺した。


 それに絶望した僕は、死んだのだ。


 生まれ変わった僕は泣いて喜んだ。

 死んだ文化はこの世界でいきていた。

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