第130話:ナルメニア=ロールⅡ~転がる玉とは相性が悪い~
いつものカジノでいつものようにいつものおっさんたちとゲームに興じる。
今日のゲームはスゴロク、振ったダイスの目だけマスを進み、マスに書かれたゲームの親として他の参加者と勝負し、ゴールした時点でのスコアを競うというゲームだ。
ダイスを使うゲームの中でこれが最も苦手なゲームといえる。
このスゴロクはダイスを主に使うが、各マスに書かれたゲームにはダイスを使うとは限らず、殆どがダイスを用いない。
ダイス運で得意なゲームだけを引いて進むということもできなくはないのだけど、ここのカジノのスゴロクはマスの配置があたしに不利になるように作られている。
以前は完全にランダムな配置だったのだが、その場合、あたしの勝率が8割を超えてしまい、ゲームにならないからということで変えられたのだ。
それでもダイスを振って進むという大前提はあたしに味方し、勝率は6割程ある。
そして、今日からは本当に私の勝率を下げたいらしく、進む数をダイスからルーレットに変更された。
円周上に数字が刻まれた円盤の上に小さな玉を転がし込み、玉が止まったところの数字分進むことができる。
そして、今日は既に9ゲームやったが、勝ち数は0だ。
「やっぱりダイスで進めない?」
「ダイスだとナルメニア嬢が強すぎるからなぁ」
「むー、これだと逆にあたしが弱すぎると思うんだけどなぁ」
先程から、ルーレットに送り込まれるマスは尽くルーレットゲームのマスだ。
そして、ルーレットゲームでは私はまったくと言っていいほど勝てない。
絶対に狙いの目には入らないし、入ったとしてもそれは悪手だったりと、ダイスの神に好かれているあたしはルーレットの神に嫌われているんじゃないかという程、外す。
「ちょっとあたしは休んでるわ」
10ゲーム目も最下位で終わり、少し休憩することを告げ、ゲームから抜ける。
「勝てなさ過ぎて拗ねちまったか?」
「ナルメニア嬢は普段勝ちすぎなんだから、こんな時ぐらい俺らに勝たせてくれてもいいだろう?」
「うるさいなぁ、あたしは10連敗したらいったんゲームから抜けるって決めているのよ」
「初めて聞いたぁ」
「そりゃあ、ナルメニア嬢がここで10連敗したのはこれが初めてだからな」
「それもそうか」
がっはっはとおっさんたちは楽しそうに笑い、次のゲームの準備を始める。
それを見ながら少し考える。
もしかして、あたしが参加しない方がおっさんたちはゲームを楽しめるのではないか?
ダイスでの勝負は言うまでもなく、ゲームバランスを崩すし、使わないゲームは、ルーレットなら極端に弱い。
そんなことをあたしが参加していたときと何も変わらない笑顔でゲームをプレイしているおっさんたちを見ているとそんなことはないのではないのではないかと少し安心しそうになるが、あたしに気を使っているだけかもしれない。
そこで、あたしは、あたしがいないときのおっさんたちの会話を知るために
これで、おっさん達の本音が聞けるだろう。
トイレの個室でインスタントマイクから送られてくる音声を聞く。
『よっしゃ!カードゲームマスだ、お前ら覚悟しろよ?』
『はっ、全力でスコアもぎ取ってやるさ』
『勝つのは俺だ!』
…………。
こいつら、ゲームの話しかしねぇ!
しばらく聞いていたが、あたしの話題は一切出ず、3ゲーム程終わったところでトイレから戻った。
「おう、嬢ちゃんおかえり、そろそろ参加するか?」
「そうね、参加するわ。今度こそ私が勝つわよ?」
ここに集まってあたしと勝負しているのはただのゲーム馬鹿だったのだ。
もちろん、あたしも。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます