第1章はじめての彼女ができるまで第4話 イチコ
気がつけば、中学最高学年になっていた。
ランドセル上がりの私にとってあれ程大人にみえて雲の上の存在であった中学3年生にアッサリなっていた。
周りを見ても頂上の景色は何も変わらない。
いつもと同じ連中がいるだけだ。
ただ、ランドセル上がりの後輩は私が中1の時よりもずっと幼く見えたくらいか。
さて、皆も経験があると思うが、学校には席替えという制度がある。
私は席替えに特に思い入れもないので前だろうが後ろだろうが隣が誰だろうが端っこの後ろで独り席だろうが構いはしなかった。
まぁ、隣が可愛い女子にこしたことはない。
さして期待もせず席替えがおわり、後ろから2列目の廊下側で隣になったのは【イチコ】という女子だった。
イチコはショートカットで背が低いバレー部のやかましい女子だった。
可愛いかどうかでいうと個性的な可愛さはあるものの、やかましさが勝っていて、まぁ、ニガテなタイプだった。
美術の授業があり、家から鏡を持ってくるようにとの事で、私はスパイダーマンの絵が描かれた小さな鏡を持って来ていた。
何度目かの美術の授業の時に私のスパイダーマンの鏡が無くなっていた。
私は、イチコはもちろん周囲の席の者に聞いたのだが皆知らないということで仕方なく別の鏡を持ってきて授業を受けていた。
ある日、何とは無しに隣の席を見るとイチコの通学カバンが開いていた。
そこに私のスパイダーマンの鏡が入っているのが見えた。
『それ私のだよね?』
と聞いたらイチコは
『私のだよ』
と、シレッと答えた。
腹が立って問い質したところ、やはり鏡は私のものだったがイチコは
『ケチ!』
と言って不機嫌顏だった。
理不尽な輩が大嫌いな私は、これ以上関わり合いになりたくないと思い、わざとらしく大きく席を離して学校生活を送ることにした。
2学期が始まり、また席替えの時期になった。
やっとイチコから解放されると思ったら、また隣の席になってしまった。
私はあきらめて席の位置を元に戻して2学期の学校生活を送った。
鏡の件を改めて謝られたこともあり、この頃からイチコとは少し会話が増えた。
3学期が始まり、また席替えの時期になった。
私はまたイチコと隣でもいいかな、と思っていたらまたイチコと隣の席になった。
偶然も3回続くとなにかあるのかなと思った。
イチコとは馬鹿話や趣味の話も良くするようになり、本やCDの貸し借りなどもした。
私だけかもしれないが、近くの席の女子としか私は話をしなかった。
どんなに可愛い子がクラスにいたとしても、わざわざそこまで行って
『昨日のテレビがさ〜、』
なんて私には出来ないし行動に違和感しかない。
ただ隣だから話していたのだが、イチコとの掛け合いが面白くていつも話をしていたし、気がつけばイチコを目で追うようになっていた。
それからイチコのことが私の頭の大半を占めるのに、そう時間はかからなかった。
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