第4話 魔導契約書
「なんだてめぇ…… っとよく見たら昼間の使えねえ魔法使いじゃねえか!」
指をさされた不届き者共が絶賛指を指しているサブリナの姿を見て嘲りの笑みを浮かべる。しかし、サブリナは先ほどまで泣いていたとは思えないほどの怒り具合で地団駄を踏み埃をまいあがらせているため周囲の客が嫌そうに顔を歪めていた。
「あぁぁぁぁ! あんた達! よくもわたしを置いていってくれたわね!」
魔法使いとは思えないほどの機敏さで入口までのテーブルを軽々と乗り越え軽装鎧の四人組の前にサブリナは仁王立ちをしていた。
「はっ! そんなもん魔法一発しか撃てないような魔法使いが悪いんじゃねえか。怨むんなら魔力量を少なく生んだお前の母ちゃんを怨むんだな」
「なんですってぇ!」
お酒のせいもあるだろうが自身の母親のことを馬鹿にされたことで瞬時にサブリナの顔が真っ赤になった。そして右手を四人組に対して開いたまま向ける。
「ママを馬鹿にしたことを撤回したら頭と体がさようならするだけにしてあげるわ」
殺意と決意の籠った目で四人組を睨みつけるサブリナ。周囲の客もサブリナの本気具合がわかったのか魔法の射程範囲内にいる客は急いで範囲外へと鮭と料理を持って退避していた。
「おもしれぇ、だったらお前の体に刻み込んでやるよ! 冒険者の怖さってやつをな!」
リーダーらしき男が剣を抜くと他の三人も下卑た笑みを浮かべながらそれぞれの武器を抜く。
まさに一足触発といった空気の中、ファラとネイトだけはマイペースにエールとおつまみを食していた。
「いい余興だね」
「然り」
「ちょっとファラちゃん」
完全に観戦モードになっていたファラに同じく観戦する側になっていた客の一人が焦ったように話しかけていた。
「なに?」
「止めさせないでいいのかい?」
「いい余興でしょ〜?」
「いや、そうじゃなくて……」
「案ずるな、審判の者が来たぞ」
ネイトが顎でしゃくった方を見ると他の客とは明らかに異質な者が目に入った。まずは大きさである。他の客よりも明らかにでかい。三倍近くはある体格でありかなり天井までが高いはずのこの
そして次に異質なのは服装である。馬鹿みたいに大きな体にも関わらずにタキシードなのである。それもかなりのぴっちり具合で。その体が動くたびに布地が悲鳴をあげるかのような音が小さく聞こえていた。
その異質の正体はここ、
「お客様、困ります」
そして声を聞いた者はさらなる違和感な気付いたことであろうその厳つい面がまえにしてはやたらと声が高くハスキーな女性のような声であることに。
「な、巨人族だと⁉︎」
しかし、そんな声など巨体の威圧感に比べれば些細な者であるようで軽装鎧組は明らかにうろたえていた。
「当店では特定の争いを覗きまして戦闘行為を禁じさしていただいています。もし戦闘行為を続けるのであれば……」
そこで一度言葉を止め、懐へと手を入れる。その動きに男たちは警戒を露わにし武器を構えるがドンはもう片方の手を制するように前に出すと懐から一枚の紙を取り出した。
「なんだよそれは?」
ドンの取り出した紙を訝しげに見つめる男たちだがそれを見たドンが口を開いた。
「
「便利なもんだなぁ」
「はい、ですからこれ以上戦闘行為を続ける場合はこちらに署名してから行っていただきます」
「やるかやらねえかはそっちが決めることだぜ」
男は笑いながらから剣先を未だに睨みつけながら手を男たちに向かい翳すサブリナへと向ける。
「……サブリナどうする」
「言われるまでもなく」
サブリナの返事にため息をついたドンはサブリナに
ひったくるように手にした
「わたし、サブリナ・フォンフォンは勝利のあかつきには敗者てそのお供の所有物の全てを貰うわ」
そう言い放つと
「いい度胸だ。ならば俺、フォード・カハナムは勝利のあかつきには貴様を俺の奴隷にしてやる」
「ところでお客様、この迷宮都市にはいつ頃から?」
自身の血で記入しているフォードにドンは話しかけた。
「あん? 昨日だよ。そこの娘とは今日の迷宮に行く時に色々あったんだよ。それがなんだ?」
「いえ、納得いたしました」
なにやら納得したドンとドンがなにを聞きたかったのかがよくわからないフォードは怪訝な表情だ。
サブリナとフォード両名の血で署名されたことにより
「この決闘は
『がめついな! マスター!』
ドンのがめつさにその場の客と決闘前のサブリナとフォードもツッコんだ。
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